モスクワへ……。
1900年8月9日、スタニスラフスキーに執筆を約束した「三人姉妹」の第一稿は10月16日に脱稿しました。
当時親交の深かったM・ゴーリキーに、手紙でこう書いています。
『三人姉妹』の執筆は、ひどく難航しました。三人の女主人公がいて、その三人がそれぞれ個性をもっていなければならず、三人とも将軍の娘なのです。舞台はペルミという地方都市に設定してあります。それに軍人社会や砲兵隊など……
ペルミという町はモスクワの東に位置する地方都市。地図で眺めると、直線距離で北海道北端から東京くらい。
三人姉妹が、モスクワにあらゆる夢、未来と希望を託したにも関わらず、そこにどうしてもたどり着けないことは、とても有名。
でも、広大なロシアを思えば、北海道から東京って、微妙に、近い訳です。
手が届きそうで届かない、彼女たちの夢。
同じような夢を、わたしもたくさん持っている。
たくさん、この手のひらからこぼして生きてきた……なんて、センチメンタルなことを、つい考えてしまいます。
マーシャみたいに、「失敗の人生……」ってつぶやきたくなる時もあるけれど、この諦観・厭世観と背中あわせに、明日を溌剌と生きたいという欲望があるんです。
トゥーゼンバフの結婚申込を受けようと決心するイリーナも、きっと、相反する思いをたくさん抱えた中で、あの、一筋の光を受け入れたのでしょう。モスクワへと続く、光。
わたしも、10代から、ことある毎に、心の中で、「モスクワへ、モスクワへ、モスクワへ……」と叫んできたひとりです。
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