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2012年6月20日 (水)

心に秘めた嵐について。

親愛なるアントン。

今夜は嵐でした。
あなたの短篇「魔女」を思い出すような、雨と風でした。

深夜、風のうなりに巻かれながら帰宅して、あなたがオリガに宛てた手紙をまたわたしは読みました。

今日、わたしが栞をはさんだ、あなたの手紙。

「ぼくはメイエルホリドに手紙を書いて、神経質な人間を表現するにはけっしてぴりぴりしてはいけない、と言ってやったのだ。だって人間の圧倒的大多数は神経質で、大多数は悩みを持ち、少数は激しい痛みを感じているではありませんか。なのに、あなたはどこに──路上であろうと家の中であろうと──自分の頭をかかえてのたうちまわっている人を目にしますか? 苦しみは、それが実生活で表現されているよう表現することが必要です──つまり、両手、両脚でではなく、声の調子や眼差しで、身振り手振りではなく、優雅さで。教養のある人間特有の繊細な心の動きは、外見上も繊細に表現されなければなりません。舞台の条件がある、とあなたはおっしゃるでしょう。いかなる条件であれ、嘘は受けつけません。」

今、わたしが生きている時代の、生きている場所の、人間は、明らかに、あなたの生きた時代、場所の、人間とは違います。
いかなる条件であれ、嘘は受けつけないと、あなたは書いた。
では、今の、ここの、本当は? 嘘は? と、わたしは考えます。
あなたの知っていたかつての人間たちをなぞるのではなく、わたしは今を生きる人間を求めます。
あなたの書いた人間たちに新しい命を吹き込むために。

わたしたちの心の中で、体の中で、吹き荒れる嵐を、どう表現しましょうか?
日常を生きるための凪いだ粧いに秘められた、やむことのない、この嵐を?
何が嘘でしょう?
何が本当でしょう?

明日また、稽古場で探すことにします。

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