5月14日(金)晴れ
YSスタジオにて
まずは朝の自主稽古から。
10時頃稽古場に到着すると、いつも通りぐーが先に来ていて鍵を開けてくれていた。
いつも寝起きの悪いスタジオの管理者と格闘してくれているぐー。ありがとう。感謝。
目下の課題である「リラックスした発声」を手に入れるためにはどうすればいいか、ぐーに相談してみる。
「まずジュリエットの台詞を言ってみて、その解放された気持ちのままロミオの台詞を言ってみたら?」
「息をもっとお腹の下の方にまで落とすために剣道の蹲踞の体勢で声出してみたら?」
次々いろんなアイディアを出してくれる。
中でも今日一番大きな発見だったのは、剣道の打ち込みの時の気合の要領で台詞を言ってみると、喉を閉めることなく腹から自然に声が出せるということ。(ちなみに自分は中学時代剣道部)
ちょっと強すぎる発声なので使い所は限られると思うけど、自分的には大きな一歩。
同じ課題で悩んでいる遼にも今度薦めてみようと思う。
活路を開いてくれたぐーに感謝。
11時頃瑞穂さんも合流。
またまた「リラックスした発声」について相談してみる。
「普段話している時の声の出し方のままで感情を込めないで台詞をただ読んでみたら?」とアドバイスを貰う。
さっそく実践してみる。
あまりにも普段の声の出し方と、台詞を言っている時の声の出し方が違うことを再確認して驚く。
「台詞を言うんだ」という気合が災いして力みすぎた声の出し方になっている。抑揚もおかしい。普通人間はそんな話し方しない。
よく石丸さんに注意される歌う様な台詞回しになってしまう原因もこれに関係するものだと思う。
「リアルな実感の伴った言葉」を手に入れるためにはこの力みを克服することが不可欠。
大事な気付きを与えてくれた瑞穂さんに感謝。
12時、みんな揃っていつも通りストレッチ。
…と思いきや、男子は自分と拓哉の二人しかいない。
淋しい。皆早く戻ってきて…
淋しさを押し殺して、あいもかわらず言うことをきかない自分の肉体と向き合う。
「腰が逃げてしまう」というストレッチでの課題を克服しようと悪戦苦闘するも惨敗。
筋肉の問題か?それとも骨か?生活習慣病か?
うーん、整体にでも行ってみようかな…
ストレッチの後、体を温めるために静香さんの振り付けでちょっとしたダンスをする。
コントラクションという、何やら上半身をうねうねさせる技が難しい。
ノブちゃんに付きっきりで教えてもらうも、なかなか習得できず。
横で見ていた拓哉があっさり出来るようになっていて凹む。
ちくしょー負けるもんか。
ちなみに桐香さんとノブちゃんのダンスが特に素敵だった。
ダンスが終わると、今日は早上がりのぐーとアキちゃんの稽古からスタート。
ぐーは三人姉妹、イリーナの労働の喜びについて語るシーンの稽古。
ちゃんと実感を持って話さないと、何回でも「へ?何?」って聴き返してくるいじわるなチェブトゥイキンさん(演・石丸さん)と格闘するぐー。
最初は言葉が体から浮いてしまっていたのが、どんどん良くなって言葉に魂が込もっていくのが見ていて聴いていてハッキリと分かる。凄い。面白い。
アキちゃんはロミジュリの稽古。
桐香さんにお腹を抑えつけられながらロミオへの愛を叫ぶアキちゃん。
抑えつけられて腹に力が入ることによって声に芯が出来る。
それだけで台詞の届いてくるパワーが全然変わってくる。
やっぱり大事なのは腹、丹田なんだと再確認。
休憩の後は自分のロミジュリから稽古再開。
今日意識して臨んだことは、
「背中にまでたっぷり息を入れること」
「色々な息の吸い方をしてみること」
「台詞の指向性、ベクトルをしっかりと意識して言葉を発すること」
「共演者をちゃんと見ること」の4つ。
静香さんがジュリエットを演ってくれる。
毎回思うことだけど、ジュリエットをやると女性陣は皆、物凄く魅力的に、可愛くなる。
静香さんが自分の言葉で喜んでくれたり、笑顔で手を握ってくれたりするとそれだけでもう今死んでもいいやってくらい嬉しくなる。自然に心が動くから無理して興奮しようとする必要がない。
でもこの前、太一さんと一緒にやっていた時の静香さんは今日の何億倍も更に更に魅力的だった。
ロミオとしての自分の力不足で、ジュリエットを全然ハッピーにさせられていないのだ。
不甲斐無い。ちくしょー不甲斐無い!
おまけに今日は自分が台詞を覚えていなかったばかりにシーンの最後まで行くことが出来なかった。不甲斐無さ過ぎる!
ポリフォニックに入って以来初めて石丸さんに「今日のはちょっと良かった」と褒められて嬉しくもあったけど、それと同じくらい悔しい気持ちで一杯だった。
男らしい男になって、心意気のある男になって、愛溢れる格好良い男になって、次こそはジュリエットを本気で喜ばせてやる!
精進あるのみ!
さて、その後。
例によって石丸さんは役者たちの感情を解放させるために様々な方法でアプローチしていく。
中でも、今日一番のクリーンヒットは、最後の最後、上村さん演じるマーシャの苦しみの具現化したものとして普段バッグを抱いているところを、バッグの代わりに拓哉を抱きしめて台詞を言うというもの。
拓哉を力一杯抱きしめながら発せられるマーシャの言葉は今までで一番実感のこもった素晴らしいものだった。
台詞に命が通って、その人物の腹底から言葉が出てきている状態。
そういう状態に到達できるように自分も、もっともっと色々考えて、アプローチしていかなきゃなと思った。
精進あるのみ!
太一さんも書いていたけど、毎回沢山の気付きや刺激や喜びや悔しさやとにかく色々なものを与えてくれるこの稽古場は自分にとって大切な場所だ。
今はまだ与えてもらってばかりの状態だけど、いつかはちゃんと自分からもこの稽古場に何かを供給出来るようになりたい。
そして、ネット検索でたまたま見付けただけのこの稽古場で、奇跡みたいに出会えた皆と芝居が出来ることを心底楽しみ尽くしたい。
この場所で芝居が出来る幸せを噛み締めて、精進あるのみ!
橋本裕介
金曜の稽古が終わってから、二日間ひた走って、ようやくこの時間に一息つく。もう三時半をまわった。裕介の稽古記録をまた読み返してみる。つかんだかなと思ったらありゃりゃりゃりゃりゃ……って感じだったぐーとか、時折裕介が見せる修行僧みたいな顔とか、旅に出た息子のこととか、いろいろいろいろ思い浮かべる。
わたしがまだ到着しない時間の稽古場。
それぞれが模索する時間の堆積。
一年間を通して、これだけの稽古をする現場が、このままの熱で続けば、きっとどこかに行けるはず。
……金曜日に裕介に言いたかったこと。
わたしが「いい」って言った時は、何かあるんです。いいものが。
模索し続ける、さらに上を目指す、常にその繰り返し、どこまで行っても「途上」の俳優修業ですが、
「いい」ものを忘れないでいる、何がよかったのかをわかっていて、再現できる、ということが俳優にとってはとても大事。
これがなかなか難しいことなのですが、積み重ねていってほしいと思います、これから見つけていく「何かよいもの」を。少しずつでも。
たくさんの何かよいもの、言い換えればたくさんの魅力が寄せ集まって、それが乱反射する時に、人の心を動かす瞬間が生まれると思うのですよ、その人特有の表現が生まれると思うのです。
この言い方じゃあ、わかりにくいかな。
稽古場で。また稽古場で。
わたしたちには、まだたっぷり時間があります。
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