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石丸の仕事

佳恵

2010.05.19

5月18日( 火) 和田会議室

11時過ぎから、全体稽古開始。


まずは、静香さんの、丁寧な、ストレッチから。
静香さんのストレッチは、身体の全部が伸びて、すごく、気持ちが良い。

私は、自分のストレッチに必死だったから、見てはいないけど、遼さんの身体が、すごく、柔らかくなったらしい。

あっという間だ。

全然出来ないところからの進化は著しいし、伸びしろが無限大だ。


ストレッチが終わると、石丸さんから、厳しい、お言葉を頂いた。

自覚はあった。私は不安を通り越して、もう、怖がってしまっていた。
心が、完全に、萎縮していた。

そんなことを、石丸さんに言わせて、というか、思わせてしまう自分が、不甲斐なくて、申し訳ない気持ちで、いっぱいになった。

こびりついた不安や、マイナスの感情を、取り除くには、どうしたら良いのか。
今は自分が、悔いのないように、真剣に、芝居に取り組むしかない。
有り難いことに、優れた指導者の下で、優れた本で、優れた仲間と、芝居が出来る環境に居る。

ちょうど、今から2年前に、お芝居と出会い、石丸さんと出会った。

あの頃には戻れないし、やっかいなものまでついてきてしまって、振りだしどころか、マイナススタートかもしれないけれど、
今、やるしかないんだ。


今日は、初めからチーム分けで、課題に取り組むことに。

三人姉妹は、
ぐーさん・上村さん。

ロミジュリは、
裕介さん・静香さん、
遼さん・桐香さん、
太一さん・私。

それぞれが各自で稽古をして、時間がきたら、順番に皆に観てもらって、発表するという課題。

いきなり太一さんから「大丈夫?」と心配される。
申し訳ないと思った。
すぐ顔に出てしまう。

和室へ行って、段取りと、バルコニーや茂みのセットを考えつつ、稽古した。

迫ってくる時間に焦りつつも、何度か稽古する内に、「今の、あそこ、良かったんじゃない?」ってことを、太一さんが言ってくれるのに、大抵、私はすぐには分からなかった。思い出せなかった。

芝居してるとき、あまりにも、嫌な意味で無意識な自分が、情けなかった。
意識が足りないから、良いときの芝居を、再現することが出来ないんだ。いつも。
いつまでもそんなんじゃダメだ。

途中で、バルコニーに使う机を稽古場に運び込んだ。
その後、何も無くなった和室で、また、何度か稽古をした。

障害物の何も無い中での稽古だと、二人の距離が、すごく、縮まった。
バルコニーが無いと、二人を抑えるものが、なくなってしまう。

稽古場で通して、セットの関係で、三人姉妹の後、ロミジュリは私達が1番にやることになった。


上村さんと、ぐーさんの三人姉妹。

始まったばかり。伸びしろ、無限大だなぁ。


太一さんと私のロミジュリ。

上っ滑り、しんどい勢い、冷めた心。言葉なんて、ちゃんと出てくる訳無い。
最悪だった、私。
余計なことばかり考えて、肝心の、心が、全く動いてなかった。

最近、お芝居するとき、
「こんな感じかな?こんな風に見えるかな」とか、そんなことばかり考えてしまって、一番大切な、心の動きや、気持ちを、掴もうとしていなかった。
何考えてたんだろう。自分に呆れる。


遼さんと桐香さんのロミジュリ。

桐香さんが、可愛い表情をすると、本当に可愛いんだ。
キラキラした目に、ピッカピカの頬で、微笑まれたら、私が男なら惚れてると思う。
石丸さんが言っていた、素直と言うのも、よく分かる。遼さんをちゃんと受け止めようとしていたのが感じられた。

遼さんも、可愛らしかった。
途中で、不思議な動きをしたりして、それも面白かった。

とっても微笑ましい、二人だった。なんだか笑えて、観ていてしんどくない。その要素は、すごく大切だと思う。


裕介さんと、静香さんのロミジュリ。

観ていて、何度も、キュンとなった。

裕介さんの声、言葉が一辺倒じゃ無くなった。
毎日毎日、努力するということが、いかに大きな変化に繋がるかということを目の当たりにした。
そして、静香さんを、すごく大切そうに、そっと、抱きしめていたことが、印象的だった。そういうのをみると、なんだか、嬉しい気持ちになる。

静香さんは目一杯、喜んでいた。可愛かった。
バルコニーをよじ登って、越えていく動作も、すごく可愛かった。
一生懸命で、興奮していくのがよく分かった。
こっちまで、ドキドキしてくる。
観ている側の心も動く。


全てのチームが終わって、大介さんの選ぶ1番のチームが裕介さん・静香さんペアになって、石丸さんの評価を聞いた。


「佳恵はもっと、台詞を咀嚼しないと」

とうとう言われてしまった。


正直、ずっと、どんな台本でも、読んだだけでは、よく分からなかった。
台詞の本当の意味を理解出来ていなかった。
演出家の言うことや、他の人がやっている芝居から、こうかな、ああかなって、考えてた。

分からないから、と、逃げていた。

ちゃんと、台本と向き合わなければ。


そして、もう一度、私達にチャンスが与えられた。

改めて芝居しても、全然うまくいかなかった。
心が少しも動かなかった。

すると、石丸さんから、
「バルコニーの前の、聖者と巡礼をやるつもりで、音楽かけてる間、太一が佳恵を抱きしめて、それから芝居を続けて。」
という指令が出た。

すごく恥ずかしかったけど、抱きしめられると安心感があった。なんだか分からないけれど、ちょっと泣きそうにもなった。

音楽がかかっている間というのは、長いような、短いような。抱きしめられている間、色んなことを考えた。
良い匂い、
ドキドキしてる、
私のドキドキも伝わってるかなぁ、
顔、どこに向ければ良いのか、
服に化粧着く!今日すっぴんで良かった、
ちょっと苦しいなぁ、
身体が温かくなってきた、
楽な体勢みつけた、とか..

バカなことばっかり。
とにかくドキドキした。

それから、芝居に入ったけども、私が全くダメだった。
さっき、あんなに、ドキドキしてたのに、お芝居すると思うと、心が固まって、動かない。

「さっき、どんな風に抱き合ってたの」と石丸さんに言われ、太一さんに抱き着いて、さっきの感覚を忘れたくなくて、離れなかった。

そして、そのまま芝居が再開した。

とにかく、離れるのが怖かった。
触れていれば、抱きしめていれば、伝わる気がしたし、受け取れる気がした。
ちゃんと、お芝居がしたいという一心で、すがりついていた。

肌で、温かさを感じながら、一人では立っていられないような感覚だった。
不安で、不安で、仕方なかった。
あんなに、ナイーブになってしまったのは、ジュリエットではなくて、私自身になっていたからだと思う。

ロミオが、愛しくて、愛しくて、たまらない、ジュリエットの感情ではなかった。
私情が大半を占めてた。
だから、太一さん、やりづらかったんじゃないかなと、申し訳なく思う。

だけど、朝が近づいて、別れ際、ほんとに悲しくなった気持ちは、大切にしたい。


チャンスはまだある。
伸びしろもきっと無限大にあると信じて、

朝、頑張って早起きするぞ!!


帰り道、駅から家までの途中にある公園から、何か、声が聞こえた。
いつもなら、無視して、速足で通り過ぎるところを、今日は、覗き込んでみた。
若い男女が、いちゃいちゃしてた。

道路からは、死角になる、茂みのそばのベンチで、離れたくなくて、一緒に居る二人。

寒いのに、風が、ビュービュー吹いてるのに、とっても、楽しそうだった。

恋愛の熱に浮かされて、半分プライベートの空間を作り出した二人は何を思っているんだろう。

ずっと、ずっと、心が動き続けて、揺れて、揺れて。
ロミオとジュリエットは、バルコニーで、話しているとき、どんなに楽しかったんだろう。嬉しかったんだろう。愛しかったんだろう。

深夜に胸が詰まるような思いで読みました。
自分の心と体で表現する世界に、滑り込むように巻き込まれたあなた。
身も心もすくんで動けない時は、そばにいる人の温かさや鼓動に触れて、誰もが生きていることを思い出してください。
そして、今自分が演じようとしている戯曲の中の人物も、まさにその温かさと鼓動をもった人間なのだと、思いだしてください。
あなたが単なる台詞だと思ってただ発声していた言葉たちが、その温かさと鼓動から生まれたものだとわかる時が来るでしょう。

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