「三人姉妹」出演者紹介 ~堀文明 編~
もはや稽古も本番も、そして公演のあった7月さえも終わろうとしている今日この頃。
だれのためでもなく自分のために、自主ロングランを続ける「稽古場日誌」
「三人姉妹」公演本番を終えてちょっと落ち着いてきた今、思い返すだに、いろんな場所に行き届か
なかったなあ、そしてそうした場所のほとんど全てに、私は自分の手足や頭で行けることが一生ない
んじゃなかろうか、と。
梅雨明けしたというのに、ややしけった考えにとりつかれがち。
しかし先日、そんな稽古場日誌を「楽しみにしてます。」という天の声が!twitterから!嬉しい!
ああ、私のセルフ・ロングランに、知らないうちに観客が。
これであと、3か月はロングラン出来る!!(ヲイ)
そんなロングランの決意もあらたに、本日の出演者紹介は、堀文明さんです。
堀さんはね、写真が・・・・。
いえ、何度か試みはしたのです。堀さんの、稽古場日誌用の写真撮影。だけど何故か、ことごとく
うまくいかず。
撮れたものは、実物の魅力の10分の一も伝わらない写真ばかり。
ええ、けして、けして私が公演会場や稽古中にことごとく、衣装つきの堀さんを撮影し忘れたとか
そんな理由じゃありません、けして。
堀さんの描写については、私の筆を唸らせてみようかと思います。
堀文明さんは、一見すると、にこやかです。でも、そのにこやかさは、堀さん自身が柔いからでは
なく、もちろんウソでもなく、堀さんの礼儀正しさと真面目さゆえのものだと思います。
人や状況を腑わけする切れ味のいい目をもっている方です。
そして、ご自身が演じられる役に、非常にナイーブな、ひそやかなところを触ろうとする方でした。
堀さんが演じた「クルイギン」という役は、私にはかなり謎な存在です。三人姉妹の次女マーシャの
夫ながら、彼女を精神的に満足させてやれない俗物のち、寝とられ亭主、みたいな、
わかりやすく滑稽に書かれた人物なのですけれど、「え、なにこの役、にぎやかし?」と思われる
言動のなかに、もしかしてものすごく凄惨なことが、この人の内部でおこっているのではないか、
と思わせることもある。
明らかに不倫している妻にむかって、「私は満足だ、満足だ、満足だ。」というセリフが書かれて
いるところなど、戦きます。
謎すぎて、本を読んだ時点では、クルイギンをクルイギンたらしめている精神構造が、まったく理解
できず、芝居の最後に、
「実は全ての黒幕がクルイギンだったのだ・・・・!」
とか言われても、うっかりナットクしてしまいかねない勢いでした。
堀さんが演じられたクルイギンはそんな私に、寝とられ亭主の記号でも俗っぽい賑やかしでもない、
人の人間がそこにいることを納得させてくれる、そんなクルイギンでした。
好きだった場面は、火事の夜、疲れて休んでいる自分の奥さんのマーシャに「私の大事な奥さん・・・。」と話しかけようとして、マーシャの妹のイリーナに、「姉さんはへとへとなのよ。」と遮られるシーン。
イリーナははっきりとは言ってませんが、要するに、あなたがそばに寄ると姉さんの気に障るから
寄るな、ということなんですよね。夫婦なのに。
それに対し、「行くよ、行くって。」とクルイギンが返すのですが、一つ目の「行くよ。」の時、そ
れまでだれにたいしても愛想のよい態度を崩さなかったクルイギンが、義理の妹のイリーナに対し、
いらただしい、遮る声を斬って捨てるような答え方をするんですよね。
でもその後すぐ、二度目の「行くって。」では、またすぐにこやかな顔をつくり、いつもの声で答える。
ただ二つのセリフの、その間に、こんなに多くのことを見せて語れるのか、という感動が毎回ありま
した。
稽古中に、私は掘さんに対していろいろやらかしたので、思いだすと今でも自分にがっかりします。
もう、「思いだすと自分にガッカリすることランキング」のかなり上位にくい込んでいるので、
(もちろん悪いのは堀さんではなく私ですよ、念のため。堀さんは私の被害者側です。)
今回は美しい思い出だけを蘇らせようとつとめました。
私がいろいろやらかしたことは・・・・公開せずに墓場までもっていく所存です。
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