本よ、本よ、本たちよ!
引っ越しである。
引っ越しの支度に追われているのである。
で、
わたしが引っ越しをする時に最も大変なのは、
大量の本を家内に抱え込んでいることである。
大量に捨てた。
大量に捨てた分は、
失職中だというおじさんが、ゴミ捨て場から運び去った。
大量に売った。
ブックオフに送った大きな段ボール三箱は、
かつてわたしを楽しませた本も楽しませなかった本も一緒くたになって、
8600円になった。
そして幸福なことに残った本たちは、
今、ダンボール箱に詰められながら、
部屋に鎮座ましますか、
ベランダの物置行きになるか、
運命の分かれ道にたっている。
愛煙者のわたしの部屋にやってきた本たちは、
背表紙に厚いヤニのヴェールをまとってきたのだが、
禁煙者になって一年のわたしは、
その厚いヴェールを、
一冊一冊丁寧に、
はがしてやっている。
薄い洗剤をふくませたタオルで拭いてやると、
面白いように汚れが取れていく。
まるでやってきた時に遡ったように、
それぞれが元の姿を取り戻していく。
感動的だ。
なにやら、自分までが新しくなるようだ。
で、
ひたすら拭く、拭き続けて、
あと本棚一つ分まできた。
引っ越しはあさって。