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2008年2月

2008年2月26日 (火)

本よ、本よ、本たちよ!

引っ越しである。
引っ越しの支度に追われているのである。
で、
わたしが引っ越しをする時に最も大変なのは、
大量の本を家内に抱え込んでいることである。

大量に捨てた。
大量に捨てた分は、
失職中だというおじさんが、ゴミ捨て場から運び去った。
大量に売った。
ブックオフに送った大きな段ボール三箱は、
かつてわたしを楽しませた本も楽しませなかった本も一緒くたになって、
8600円になった。

そして幸福なことに残った本たちは、
今、ダンボール箱に詰められながら、
部屋に鎮座ましますか、
ベランダの物置行きになるか、
運命の分かれ道にたっている。

愛煙者のわたしの部屋にやってきた本たちは、
背表紙に厚いヤニのヴェールをまとってきたのだが、
禁煙者になって一年のわたしは、
その厚いヴェールを、
一冊一冊丁寧に、
はがしてやっている。
薄い洗剤をふくませたタオルで拭いてやると、
面白いように汚れが取れていく。

まるでやってきた時に遡ったように、
それぞれが元の姿を取り戻していく。
感動的だ。
なにやら、自分までが新しくなるようだ。
で、
ひたすら拭く、拭き続けて、
あと本棚一つ分まできた。

引っ越しはあさって。

40代半ば、初眼鏡。

■目がかすむ、肩が凝る、頭痛がする。
心配になってMRIとCTを撮ったのは、一昨年の年末のこと。
問診では「明日の記憶」に出てきた若年性アルツハイマーのテストが出てきたりして、ちょっとドキドキ。
結果。
偏頭痛の原因は脳内には見あたらず、眼精疲労と、眼精疲労による肩凝りが原因ではないかという診断だった。
その日はすぐに眼鏡をつくるつもりが、すぐにのど元過ぎてしまった。

■目のかすみ、肩の凝り、頭痛、さらに悪化。
こりゃもうだめだと、ようやく眼鏡屋さんへ。
渋谷で、駆け込み。
検眼してみると、右目が0.1左目が0.9…………え?…………両方1.5だったのに。
この左右のアンバランスと、見えるつもりで目を酷使する仕事をしていたことは、確実にわたしを蝕んでいたに違いない。
フレームを選ぶのもドキドキ。
お店の人の協力を得て、あれをかけ、これをかけ。
どれをかけても「わたしじゃない!」ってところから、ようやく「なんか……自然?」と思えるものを見つけるまで、ずいぶん時間が必要だった。
でも、眼鏡って高い。わたしがたまたま入った店は、フレームがほぼ3万円以上。レンズを入れたら、結局6万7千円。
引っ越しを控えて出費の続くところに、またお高いお買い物。うーん、いいか、これで安心と健康が買えるなら。
眼鏡をかけて自転車で街を走ると、久々に見るくっきり世界。
上目遣いでフレームをよけ裸眼世界、真っ直ぐ前見て眼鏡世界。
ぼやけた世界と輪郭のはっきりした世界を交互に楽しんだ。
帰宅して鏡を見ると、なんだか秀才さんみたいな顔に笑ってしまう。

■幼い頃から眼鏡をかけている人に言うと笑ってしまわれそうだが、眼鏡を買うことが今日の一大事件だった。
「はじめて」って、こういうことだよなあ。
わたしは「はじめて」を教えることの多い職業だ。一昨年から続けている市民ミュージカルの活動でも、わたしに導かれて老若男女が「はじめて」を楽しんでいる。その感動は、確かにわたしを感動させ、自分の初心を思い出す。
いつまでも、ウブな心で居続けたいなあ。
ウブでいると心が痛みすぎて生きているのが辛くなるようなことばかりだけれど、でも、上手に、自分のウブな部分を守っていきたい。

2008年2月13日 (水)

喪ったもの。

7年ぶりに引っ越しをすることになった。
空いた時間、苦手な片付けに追われる。
すると。
押し入れから、物置から、部家のあちこちから、自分の書き散らした言葉たちが顕れる。
20代30代、ワープロで書くかたわら、レポート用紙に、集計用紙に、便せんに、白紙に、原稿用紙に、大学ノートに、ポケットノートに、広告紙の裏に、とにかく書き続けた言葉たち。
考えるときは、書きながら考えた。
悩むときは、書きながら悩んだ。
その筆勢と、選んだことばたちが、過去の時間を連れてくる。
かつての自分が仄かに立ち上がってくる。

他者を導いたり、若い後進たちに教えたりと、自分自身が揺るがない存在にならなければならない年齢になり、
わたしは揺らぎながら書くことを忘れてしまった。

かつてのわたしが書いた瑞々しい言葉たちを前に、獲得したものと喪失したものを思う。Carver_3


右のノートは、レイモンド・カーヴァーのもの。
社会に当たり前には適応できなかった彼は、
あまりに早く逝ってしまったが、
その言葉は、風に揺らぐ水面のように、
輝きを放ち続けた。
ゆらゆらと、何かの形におさまることなく。

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