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2008年7月

2008年7月19日 (土)

花とおじさん。

激しい仕事。
きしみ始めた肉体。
休息がない。
満たされない精神。
もうすぐ47歳になろうとする、
わたし。

仕事帰りの電車は30分乗る。
乗って、とりあえず本を開くのだが、
眠ってしまう。
いつものこと。

肩をたたかれた。
ぼんやり目を開けると、
酒やけしたように赤い、
……60代だろうか、
おじさんの顔があった。
そして、黄色い花があった。
わたしの膝の上に、
ビニール袋から顔を出した、
一輪の黄色い花があった。

そして、大きい声。

「おじさんの顔は見なくていいからさ、
花、見てやってよ。
お酒飲んでてさ、花、もらったんだけど、
おじさん、花、分からないからさ、
そしたら、あんた、
疲れて寝ててさ、
口開けて寝ててさ、
あんた、花が分かると思ってさ、
おじさんより、花が喜ぶと思ってさ」


……目の前の黄色い花
……目の前の訳わかんないおじさん
……ビニール袋に、土と根っこごと、黄色い花
……おじさん、お酒のにおい、笑ってる、
……呵呵大笑って言葉、思い出す。

「だから、おじさん見なくていいから、
花、見てやってよ。
あんた、疲れてるからさ、
花、わかるよね、
俺、わからないからさ」

電車は、池袋に着いた。
おじさんは、わたしの胸の前に右手を突き出した。
え? 胸をさわるのか?
と疑ったのはつかの間、
わたしは、おじさんの手を握りかえした。
おじさんは、軽く握りかえして、
池袋の駅に降りた。

……それだけ。

小さなひまわりは、
テレビラックに飾った。
カルピスの紙パックを切って、
根っこと土ごといれて、
水をあげて、
Wiiの横に飾った。

こんな台詞があった。
22年前に出演した芝居の台詞。

「さあ、握手をしよう。
そうすれば、僕の青春が君にしみ通り、
君の青春が僕にしみ通り……」

50代を目前に、
現在を捨て、
新しい道を行こうとするわたしに、
花が手渡された。

決めた道を、
行こうと思う。

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