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2009年3月12日 (木)

俳優私塾開設に向けて。

俳優の仕事は、自分の心と体を使って、他者を生きることだと言えるでしょう。
■人は、あらゆる可能性を持って生まれてきますが、
生きていく中で自分の可能性を選び取っていきます。
この選び取るという作業は、
ほかのあらゆる可能性を捨てていくという作業でもあります。
俳優の仕事は、このたくさんの捨ててしまった可能性、
「もしかしたらありえたかもしれない自分」
を生きる、生きなおす、仕事だと言えるかもしれません。
俳優は、一度しかない人生で、複数の人生を選び取れる、
稀有な職業なのです。
そしてまた、複数の人生という鏡に映った自分と出会い、
生きている実感をより色濃くする職業でもあります。

POLYPHONICでは、いい俳優であるために何が必要か、既成の概念にとらわれずに、マンツーマンで探っていきます。
■20年以上、たくさんのプロの俳優たちと演劇の現場で仕事をしてきました。
そこで感じるのは、稽古の仕方は俳優の数だけあるということです。
それぞれ違う心を持ち、違う生活体験を持ち、違う環境で育っている。
それぞれ違う肉体を持ち、違う声帯を持ち、違う容姿で生きている。
だからこそ、俳優と導く者(演出家)とが丁寧に出会い、
個々に必要な稽古を探っていきべきだと考えています。

まずは、他者を演じてみましょう。
語りかけたい人や世界が、大きく遠ければ、
大きな声が必要です。
そこに、壊れてしまいそうな心があるなら、
命の通った囁き声が必要かもしれません。
難しいことを語るなら、複雑な真理を求めるなら、
明晰な日本語が必要かもしれません。
現代の若者を生きるなら、
現代の若者の言葉のリアリティーが必要かもしれません。
シェイクスピアをやるなら、
チェーホフをやるなら、
ベケットをやるなら、
ギリシャ悲劇をやるなら、
テネシー・ウィリアムズをやるなら、
三島由紀夫をやるなら、
三谷幸喜をやるなら、
野田秀樹をやるなら、
松尾スズキをやるなら、
……と考えると、偏った演技術などいりませんね。
そして、どれも面白そうです。
しっかりと地に足をつけて、
作品に出会っていきたいものです。
稽古場で、稽古の中で、手に入れたいことが、
どんどん出てくるはずです。

POLYPHONICは自由です。
■15歳から75歳までの年齢層で活動する市民ミュージカルを率いている経験から、わたしはどん な年代からスタートしても、俳優たる可能性があると考えています。
ですから、募集にあたって、年齢制限を設けません。
健康な心と体があれば、稽古を始めることができます。
また、少人数の私塾になりますから、
稽古の時間や頻度、参加の仕方も、
話し合いながら決め ていきます。
それぞれが、無理のない状況で稽古に臨めるように気配りできるのが、小規模な 私塾のよいところだと言えるでしょう。
1年間、演技のことだけ考えて暮らしたい人には、とことんつきあいましょう。
たくさんの戯 曲に立ち向かい、たくさんの台詞を覚え、たくさんの他者を生きてみましょう。
ダンスが必要 になる場合、歌が必要になる場合があるでしょう。その時には、一流のトレーナーが稽古に参 加することになるはずです。
穏やかに演劇と出会いたい人には、ゆっくりしたペースのカリキュラムを組みます。個人レッ スンがよい場合もあるでしょう。

わたしは、新しい俳優との出会いを待っています。

石丸さち子

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