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2010年8月

2010年8月28日 (土)

コリコリした青い果実のように。

「ガラスの仮面」千秋楽。
わたしは自分の仕事に追われて、初日を開けて3日目以降、まったく劇場に顔を出せなかった。
心強い後輩俊太郎に任せっきりだった。蜷川カンパニーで演出助手や演出補の大事な仕事のひとつに、欠かさず本番を観るランニングの仕事がある。仕事に参加して本番を観ないのは、わたしは初めてのことだ。
今日、わたしは久しぶりに芝居を観たのだ。
蜷川さんは、初日を開けると、よくこう話す。
熟した果実より、ちょっとコリコリした青い果実の方が好きだ、と。
芝居は初日を開けると、変容する。良くも悪しくも。
その成熟より、初日を迎えた頃の生硬さが、好ましい場合がある。
腐りかけの美味しさに気づく時だってあるけれど、
「ガラスの仮面」は、今日もコリコリしていた。
それは、成長途上の少女たちの物語にとって、とても喜ばしいことだった。
終演後、ともに音楽を作った池上さんと抱き合って、お互いの仕事を密やかにたたえ合う。
わたしもまた、成長途上の夢見る女で、その思いはちゃんと美帆や佳恵に受け継がれているようで、胸が熱くなった。
大阪で幕を開けるという仕事がまだ残っているが、明日からまた、「悪魔の絵本」に没頭する。
見えていないことばかり。
見えたと思ったら、また霧の中。
わたしは作家谷賢一に「愛」についての話をお願いしたのに、
自分が稽古場で「愛」を忘れて単に演劇としてシーンを作っていることに気づき、愕然としたり。
……コリコリした青い果実のような自分で、わたしは「愛」を読み解かなければ。
わたしは、成熟なんかしていないのだから。


2010年8月26日 (木)

演劇三昧。喜び三昧。

明けても暮れても、稽古している。
私塾でみんなの感情を開放していく。
新しいテキストに岸田国士を選んで稽古場で読み解いていくと、発見の嵐で独り興奮する。
その興奮の源の、人の心の襞を、伝える面白さ。
秩父に行けば、歌いまくる。
歌う喜びに、いちばん救われているのは自分だという気もする。
音を重ねて和する歓び。
みんなの束になった声を、紡いだり撚ったりするのは、これまた楽しく。
Theatre Polyphonicの稽古は、
いつもよりエチュードに時間を割いている。
新しい俳優たちと、本質的に、出会う時間を重ねる。
自分のキャスティングが当たっていることを知る。
人間愛と人間嫌いを行き来して生きてきたが、
ここに来て、人間愛、爆発寸前。
演劇三昧のこの日々で、
最も幸福な時は、
俳優たちに囲まれて、
スタッフの想像力に支えられて、
戯曲と人間を読み解いている時間。
わたしが今まで生きてきたすべてが、
今この時のためであったと思えるような瞬間が続く。
この公演を夢見たわたしは、
あらゆる責任を負っていて、
山積する仕事に溜息の出ることもあるが、
少しずつ、少しずつ、
わたしの夢にみんなの夢が重なって、
舵取りする喜びに、しょっちゅう胸が熱くなる。
演劇の力を、感じる。

2010年8月19日 (木)

わたしたちの六メートル四方。

ト書きで指定された、六メートル四方ほどの広い部屋。
それが、わたしたちの舞台だ。

そこに、そこで生きた登場人物たちの思いが堆積していく。
そこに、今を生きるわたしたち演劇者の思いが堆積していく。

10月1日に、わたしは、わたしたちは、
どんな六メートル四方を生み出しているのだろう。

2010年8月18日 (水)

Don't Forget.

とうとうやってきた。
稽古初日。

奮い立っている。

Don't Forget.

伝える心と、
伝わる言葉。

それをさし出すときの、
わが心身の柔らかさ。

2010年8月16日 (月)

ハレヤカに。

かかりっきりだった「ガラスの仮面」が初日を開け、休む間なく「悪魔の絵本」モードにシフトチェンジして打ち合わせのために猛勉強。今夜、ブログを書く心の余裕がようやく戻ってきた。

「ガラスの仮面」は、久しぶりの演出補仕事というより、歌詞を書く仕事に没頭した。
光とか、希望とか、道とか、夢とか、そんな、悪い言い方をすれば歌詞として手垢のついた言葉たちと、出会い直すのが大変だった。生まれたての輝きを、そんな言葉たちが持てるように、自分の心を洗い直すような作業であり、時間であり。
最後の一曲が書けなくって、部屋でもんどり打って苦しんでいる時に、たまたま手にとったメイ・サートンの「独り居の日記」。
言葉と愛に生きた強い女性が、余生を植物と対話して過ごしている中で、「光」について語ったところを読んだ時、「光」という一文字が輝きだした。
……光がなければ花は咲かない。

精神を言葉に託して、遺して、亡くなったメイ・サートンからわたしは「光」を受け継ぎ、それをマヤや亜弓に大事に大事に手渡すつもりになり、詞が動き始めた。
わたしにとって、大事な瞬間だった。
詞はメロディーと一緒になって弾みを持ち、今を生きる女優の心と声帯を揺らし、連日舞台にかかっている。

さあ。
次は「悪魔の絵本」Theatre Polyphonicの稽古。
稽古を始める時には台詞を覚えておいてほしいと俳優諸氏に伝えてあるから、きっと新しい言葉たちとの格闘が色んなところで始まっているはず。
わたしも然り。もちろんね。
一年半前にわたしの中に芽吹いた企画が、とうとう動き出す。
大いなる恐怖感。
でも、ハレヤカ。
目の前に新しい道がのびている。

信頼できるスタッフがいる。
すっごくいい演出助手も登場してくれた。
明日は劇場の下見。
明後日はいよいよ出演者全員が揃って本読みできる!
明明後日は、私塾のみんなと久しぶりに稽古できる!
晴れ晴れ、晴れやかに、この夏を楽しもう。

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