・私塾は、確かな成長とともにある混乱、困惑、苦悩、いろんな思いが渦巻く。わたしを信じて!というには、真っ向から彼らに立ち向かうこと。責任をもって、彼らに踏み込んでいくこと。口はばったいけれど、愛すること。
・明日から、コンサート本番に向けて、いよいよ秩父泊まり込み。一昨日の稽古は、みんなが疲れていくことを確認するような時間だった。でも、うちのメンバーは、きっちり本番にあわせてくることをわたしは信じている。だって、もう4年もわたしとガチでつきあってきたんだから。わたしが、ぶっ飛びスピードで演出をつけても、「想定内です」と言ってくれる。一緒にモノを創るには、こうして時間を積み重ねることがどれほど大事か。
今回は、男性の中心メンバーが仕事に追われ、参加できず、女の中に男が二人の出演者だった。
で、男性助っ人として私塾の吉木遼君に出演してもらうことになったのだが、今日私塾の稽古場で、「両親が見にくるんです」と知らされた。
え? 千葉から、秩父へ……? いったい何時間かけて?
なんだか胸が熱くなるわたし。
・思い出。
わたしが俳優時代、はじめて帝劇でワンシーン持った時、父と母が見にきてくれた。商業演劇だから、スターの出演シーンはシーンが終わる毎に拍手がくるのだけれど、わたしのシーンにくることは、ごく稀だった。それが、両親の来た日、やけに拍手が多くって……。
聞けば、母はシーン終わりで、「うちの娘なんです、拍手してやってください!」とやったそうだ。もちろん、関西弁で……。
・そして今日。
父から留守電が入っていた。
これがある度、わたしは身を凍らせる。
動脈瘤手術から奇跡の復活を果たし、今やごはんが美味しいと元気を取り戻した母ではあるが、やはり離れている身としては、ずっと心配。
電話してみると、なんだなんだ、ちょっとした用事だけで。
母は元気元気。
そして、ほっとして明るい声を出すわたしに、「あんたの声、今日元気やわ、ママ、うれしなる」と。
ママが元気だから、わたしは元気になったのよ。
・文学座の戌井先生が急逝された。
「近松心中物語」の方言指導で来てくださったことがあった。まだ蜷川さんの稽古に入る前の、基礎稽古の時期だった。
方言指導だと思ったら、いきなり稽古になってしまい、梅川の高橋恵子さん相手に、わたしはなんと忠兵衛の代役をやって……なんだか、ずいぶん、何度も何度も封印切りとか心中とかやったのだった。
戌井先生は、穏やかな顔で、稽古を見守られていた。とても柔らかな日本語を使われる方だった。
直接、ご一緒したのはその時きりだが、深々と感謝の気持ちがある。
ご冥福をお祈りします。