大富士さんを忍んで。
「EYES」の興奮冷めやらぬまま、12月公演の準備に入り、今日は個人レッスン、明日から私塾の稽古も再開する。
大きな一本が終わって、そして人生は続く。だな。
と、ひとりごちながら仕事を続けているところに、訃報が届いた。
蜷川カンパニー時代、たくさんの芝居でご一緒した、もと力士で俳優の、大富士さんが、脳梗塞で亡くなったとの、急な報せ。
一番最初は、蜷川マクベスだったかな、とすると、もう20年ほども前の出会いになる。それから、本当に、何本ご一緒したことだろう。
気は優しくて力持ちという言葉を、体現するような人だった。
穏やかで、誰からも愛される人だった。
人に道を譲りながらも、どっしりと迷わず、自分の道を歩いているような印象を持ち続けていた。
早すぎる。
わたしより三歳の年上。
同じ世代。
早すぎる。
悲しい。
ご冥福をお祈りします。
……今日は、朝から、わたしの人生の転機となるような大きな悲しみ、喪失があって、ひとしきり、天井に向かって泣いた。放出しておかないと、前に進めないような固まりがあったので、咆哮とともに吐き出した。
すると、わたしに動物として親近感を持ったのか、愛猫風はうろうろと部屋の中で落ち着かず、わたしの涙をしきりに舐めにきた。
わたしも、風も、変わらず、生きている動物。
この、生きている、というところに、深い喜びを覚えつつ、今日の一日を終える。