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2015年3月

2015年3月26日 (木)

サンタ・エビータ 初日

初日を開ける前の演出家の気持ちは、どうにも説明しようがない。
居場所なく、劇場内をうろうろして、出産を前にしたお父さんみたいになる。
そして、作品が、一瞬一瞬、この世に生まれていくのを目撃する。
この10m×6mほどの場所に、夢を生み出すために注ぎ込んできた時間や愛情を、観客と共有していく瞬間が、積み重なっていく。
2時間の夢から観客席が覚めて、拍手が起こる。
わたしはブエノスアイレスに到着したエバのような気持ち。夢のような光景。
演劇の女神様は、確かに水さんに微笑んでいた。
演劇の女神様は、魂の大きい俳優に優しいのだ。
そして、それを見守る今井さんの存在の優しさの大きさたるや。
台本を書きあげる時、耳の中に聞こえてくるエバとお兄さんの声を、熱病にうなされるように書き取っていった。
今はそれが、水さんと今井さんの声で聞こえる。
そして、劇場全体が、ブエノスアイレスになる。
あと、たった6回しかない。
でもたったそれだけの中でも、この生まれたばかりの生き物は、変容し、成長していくだろう。わたしはそれを静かに見守ろう。
エバの魂が、またどこか新しい時、新しい地で蘇ることに、夢の裾野を広げながら。

2015年3月22日 (日)

サンタ・エビータ 最終稽古。

最終稽古。とてもとてもいい通し稽古で、素晴らしい出演者とご一緒できる演出家の喜びを味わった。
予定より1時間半も早く稽古を終えて、陽の落ちる前に、のんびりと街を眺めながら帰宅。
いつも考え事ばかりして街を移動するものだから、見えていなかったものが、新しい景色のように眼に飛び込んでくる。とてもやわらかな、しあわせの感覚。
劇場入りを前に、こんなに穏やかな気持ちでいるのは、長らく仕事をしているけど、とても珍しい。
新しいエビータ像。
エビータを生きる、水さん。
エビータを取り巻く男たちを一人で演じ分ける、今井さん。
タンゴ漬けになって選りに選った楽曲たち。
そこにのせた、歌の詞たち。
バンドネオンの生演奏になって、それらが歌声にのる。
タンゴのリズムに、血が湧く。躍る。
エビータの血の熱さが、人々を熱くする。
とても2時間では語りきれないエバ・ペロンの人生を、
いかに切り取ったか。
かつて生きた、大きすぎる魂に、水夏希さんが、
いかに挑み表現しているか。
喪われた魂が、語り始める芝居です。
たくさんの喪われた魂のことを想ってつくった芝居です。
今井さんが歌ってくださる、ある曲は、三津五郎さんが亡くなったことを知った夜に書き上げた。
その夜でなければ生まれなかった。
生きている偶然の奇跡に操られるように生まれてきたものです。
烈しく重い魂が、政治の世界に生きた話は、つき添うだけでエネルギーが必要です。現在の日本の政治を憂える芝居にも見えてきます。
それでも、キュートで、かっこよくって、お洒落なんです。
作者がここまで饒舌に宣伝しちゃっていいの?
いいんです。
きっと受け取ってもらえるものがありますから。
まだ、御覧頂ける日があります。
是非、是非、観てほしい。
観て頂くために、わたしは、毎日を生きている。

2015年3月20日 (金)

サンタ・エビータ〜タンゴの調べに蘇る魂

たくさんの芝居を創ってきたなあ。
走りつづけて創ってきた。
どれも間違いなく傑作だったんだよ。
でも、いつも、今創ってるものが最高に愛しくて、最高傑作なんだ。
「サンタ・エビータ」
エバ・ペロンの苛烈な人生に、水夏希さん、今井清隆さんの魅力。
そして……タンゴ。
一人でも、一人でも多くの人に観てほしい。
今日はまだまだ仕事するけれど、どうにか空き時間を見つけて、
言葉を尽くして、この舞台の魅力を伝えたい。
観たいと思ってくださる方が増えればうれしい、とにかく観てほしい。
水さん、今井さんと、三人の稽古、最高の座組。
充実した稽古が続いています。
========
「サンタ・エビータ〜タンゴの調べに蘇る魂」
出演:水夏希 今井清隆
バンドネオン:渡辺公章
作/演出:石丸さち子
振付:前田清実
照明:塚本悟
音響:秦大介
衣裳:友好まり子
舞台監督:山本圭太
会場:DDD AOYAMA CROSS THEATER
料金:7800円(全席指定)
3月25日(水) 14時/19時
3月26日(木) 19時
3月27日(金) 14時(売切)
3月28日(土) 13時(売切)/17時
3月29日(日) 13時(売切)/17時(売切)
──出会ってほしい、エビータに。
この世を去ってなお、
アルゼンチンで聖女のように崇められ、愛されているエビータ。
同時に、政界の悪女と今でも誹られ続けるエビータ。
永遠に生きることを欲した業の深い女の一生は33年間で終わってしまいました。
この人生の謎に、時を経て、エビータ自身が答え始めます。
魂を呼び戻すのは、かつて生きた喜びや痛みを抱え込んだタンゴの調べ……。
平凡に生まれた女性を、歴史に残る聖女にしたのは、
奇跡や運命の力ではなく、意志と行動の力でした。
自分と他者を愛する比類のない才能、世界を読み取る慧眼、そしてエネルギーに、どうぞ出会ってください。
女はたった一人で、たった一つの人生で、どこまで生きられるのでしょう?
石丸さち子

2015年3月18日 (水)

わたしと俳優塾。

俳優私塾を開いて、もうすぐ7年。
雨の日も風の日も、って感じで、平日の昼間に、週4回の稽古を続けてきた。
自分の主催公演の場合は、昼は私塾、夜は公演稽古というふうに、なるべく休まずにすむように続けてきた。
忙しい時は、休めれば……と思うし、台本を書いている時など、ずっと本に集中して外に出たくない……と思うこともある。
でも、続けてきた。
今は、「エビータ」の稽古が昼間なので、夜を私塾にまわしている。
でも、これがあるから、わたしはわたしを保っていられる。
止まらずに、成長できる。
俳優たちと一緒に、ずっと身体を動かしているし、発声練習もし続けている。
俳優たちの演技を導く中で、トレーナーとしても演出家としても、数々の発見や気づきがある。
何より、週に4回稽古場に行ける、ということが素晴らしい。
今日、休憩中に、今井さんと、わたしの私塾の話になった。
大変だけど、稽古に行き続けてきたことを話した。
「キョウイクがあるのとキョウヨウがあるのは大事だよね」
と言われた。
わたしは、「教育と教養があるのは大事」とすぐに変換したのだけれど、
実は、
「今日、行く」と「今日、用がある」が大事、ということだった。
今日、行く。
今日、用がある。
本当に、この当たり前なことが、幸せだと思う。
稽古が早く終わったので、春のお洋服を買いに行った。
今日、行こう、と思った。
贅沢に洋服を選ぶのは、何よりの自分へのご褒美。
稽古をしている間に、本番用の、素晴らしい音源もあがってきた。
本日も、幸せなり。

2015年3月13日 (金)

エビータと、水さんと。

稽古を通して、俳優と作品への思いを共有していくことは、 なんと心躍る作業であろうか。

今日は全体稽古ではなく、水さんと一体一のテーブル稽古だった。
稽古場で、わたしはとてもよく喋る演出家だ。 伝えるべきことがあるし、それが用意できなければ稽古場には行けない。そして、伝えることに全力でエネルギーを注ぐ。伝えるための言葉に向き合う。
でも今日は、いつも「これくらい説明しなければ伝わりきらないだろう」と思ってしゃべる量の半分くらいで、もう、キャッチした表情が読み取れる。
水さんの魅力はたくさんあるが、そのクレバーさは特筆に値する。 そして、その後、一個の人として、しっかり感じ、考えてくれる。
とても色濃い、感じ合う稽古時間を過ごした後、 エビータを実現出来れば、この台本を実現出来れば、それは素晴らしいことになるだろうと、お互いに想像して、一緒に震えるような気持ちになった。 そこまで、きっと一緒に走れるという実感は、演出家にとってどれほど喜ばしいことか。
このところ、稽古が終わると、なかなか真っ直ぐ帰る気にならない。 静かなる興奮の残り香を味わいながら、寄り道して台本の整理などする。 演劇人にとって、最も気を抜けない闘いの時と、喜びの時は、同時にやってきて、縺れあい縒りあいながら、進んでいく。

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