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2015年10月

2015年10月19日 (月)

バースデイガールの夜は更けて。

一日の間に、たくさんの「おめでとう」を頂きました。
めでたいっていう言葉は、
愛でたいっていう言葉を思わせて、
ともに同じ時代を生きて、
たまたまわたしと知り合いでいてくれる方々に、
たくさん愛情をいただいた気持ちになります。
ありがたいです。

夜も深い時間に、
映理子さんという友人から、
眠るまで揺りかごを揺すってくれるような、
長いゆったりしたメッセージが届いて、
感動しました。

岩谷時子さんが越路吹雪さんに送った詩に、
ふとしたことで出会い。
言葉がどれほど、
生きることと、
永遠に喪われることに肉迫するか、
思い知りました。

揺りかごを揺するように、
無数の墓石を抱くように、
言葉を使いたいと思います。

これは、ジャック・プレヴェールの詩。

 「ひとりで眠る者は、
  その揺りかごを揺すられているのだ、
  その者の愛している、
  愛した、
  愛するであろう者たちすべてによって。」

眠りを前に、
今夜もまた朝を迎えるために眠れる喜びを感じます。
言葉について、さまざまを思う、誕生日でした。

2015年10月18日 (日)

2015年の誕生日に寄せて。

誰の、どの小説の一節だったか覚えていないのだが、
気になって抜書きしていたメモをふと見つける。
  人生で最も早く手に入って、一番長く忘れない学問。
  それは、経験大学で取得する、H・L・L の学位。
  人生のつらい教訓……HARD LESSON OF LIFE。
今日は誕生日だと言うのに、
H・L・L の学位を取るための修行みたいな一日を迎えている。
出物腫れ物所嫌わず。
こういう一日は誕生日だろうがなんだろうが、かまわず訪れる。
「パパ、ママ、この辛さが生きてる証拠よね?」と、
目にためた涙をきらきらと輝かせて報告し、
こうして生かされている実感を、強引に納得したいような気分だ。
(父母が心配するので、もちろん実際は報告しない。)
タイムラインに、たくさんの「おめでとう」
……ありがとうございます。
「素敵な一日を……」と言われる度に、
「ごめんなさい、あんまり素敵じゃない一日を過ごしています」
と、あやまりたい気分になるものの、
実はまんざらでもない。
「STONER」という小説を読んでいる。
いっとき話題になったものなので、読んだ人も多いかもしれない。
なんでもない人物の、なんでもない人生の最初から最期までを、
淡々と書き綴った小説だ。
そのなんでもなさの中に、
生きることにまつわるあらゆる痛みとわずかな喜びを想像して、
たくさんのH・L・L を我が事のように感じながら、
読み進めている。
そうして、わたしのなんでもない一日が過ぎていく。
きっと、今夜夜更かしして、読み切ってしまうのではないか。
ひとつの人生を。
凄いことだな。
誕生日。
さてあと何回迎えられるのか。
仕事して過ごすのは、きっと一番幸せ。
賑やかに祝われて過ごすもよし、
ひそやかに祝われて過ごすもよし。
生きる痛みのただ中の時だってあるだろう、
絶望していることだってあるだろう。
人生の苛酷さに怯えていることもあるかもしれない。
(怖くてこれ以上想像できない。)
とにかく、生きていればこその時間たち。
今はひたすら、ありがたい。
父と母に感謝し、
わたしの人生に関わってくれている人たちに感謝し、
この日を過ごそう。

そんな魔法を手に入れたい。

行きつけのカフェで書き物、読書。
馴染みの店主(同年配の女性)に、 「今日きれいですよ!」って言われる。
「今日」と限定されるのは微妙……と思いつつ、
鏡を見たら、納得の穏やかな顔。
こんなことでも、ひと山超えたことがわかる。

髪振り乱して生きてたよなあ、そう言えば。
「どんなに大変でも柔らかく美しくいられる」
そんな魔法を手にいれたいよ。
「どんなに大変でも初日開ける」とか、通常魔法かもね。
さらに特別な魔法を手に入れたいものだ。
今日を留めるために、
(あと3日でまた一つ歳をとる……。)
風と記念撮影。

2015_10_15

2015年10月15日 (木)

「Sleeping Beauties 夢をあやつるマブの女王」

10月15日

三越劇場へご来場くださった皆様、ありがとうございました。
心より感謝いたします。
たくさんの感想、感動、意見を、感じ取りました。
わたしらしくない作品とも言われるし、
実にわたしらしい作品とも言われる、
とても複雑な作品です。
何度も観て、作品を研究しそれぞれに深読みしてくださるお客さまも多数。
ファンタジーとエンタテインメントの衣を着たわたしの妄想は、
様々な反響を呼びました。
出演者とスタッフが、わたし以上に作品を愛してくれて、
観客の皆様の心を、様々な形で動かせる作品に育ちました。
兵庫県立芸術文化センターでの上演に活かしていきたいと思います。
東京公演終演から二日が過ぎました。
台本執筆時に日参していたカフェに来て、
次の作品のことを、のんびり、楽しく考えています。
久しぶりに、仕事と関係のない小説も鞄に入っている。
家に帰れば愛猫風(ふう)が、頼むから仕事をしてくれるなと言わんばかりに、常時へばりついて邪魔をします。
マウスを握る手にもたれて寝たり、キーボードの上に座ったり、
困ることをよ〜く知っています。
何をしても愛らしいので、確実に仕事は止まります。
激動の後の、
穏やかな時間は、格別の味。
大好きな俳優たちとしばしの別れの寂しさと、
一人で過ごす喜びを、
同時に味わっています。


10月11日
明日千穐楽を迎える、「Sleepiing Beauties 夢をあやつるマブの女王」。
客席には、公演を重ねるごとに進化深化していく俳優を心から楽しんでくださる方がおり。
この仕掛けに溢れた作品の深読みを楽しんでくださる方がおり。
浄化の涙を流してくださる方がおり。
ずっしりしたテーマを受け取ってくださる方がおり。
作品に「出会えてよかった」という思いが、観客席から拍手の熱さで伝わってきます。
少女と妖精と犬の冒険の物語は、ファンタジーのふりをした、かなり深々とした物語です。底の底にまで手を伸ばしてくださる方が、どんどん増えてきて、わたしは産み出したものに、誇りを持っています。
千穐楽を前にして、俳優賛歌を書きます。
明日、観たい!と思ってくださる方が一人でも増えるように!
彩輝なおさん。さえちゃん。わたしの演出はこの人の台本の理解の深さに支えられています。ファンタジーと現実を行き来する鍵となる女優の力。昔とった杵柄のかっこよさは、もうため息もの。それを凌駕してくる勢いの、「心」。今、全身全霊で、舞台に生きてくれています。演劇魔法を、使えるだけ使って、作品を観客に届けてくれています。柱です。
金すんらさん。観てくださった人にしか伝わらない、この人の演じるモンスター役の凄さ。稽古場から、ずっと、ずっと、集中力が途切れません。板に乗ったとたん、役を生ききる強さ。「ウレシパモシリ」を観て、歌声に惚れきって出演を希望したのですが、歌だけでなく、演じるということすべてにおいて、モンスターでした。
沼尾みゆきさん。出会えば出会うほど、つまり、舞台での姿を見ればみるほど、魅力が溢れてくる人。繊細に磨かれた歌声の美しさ。音楽と歌詞への理解の深さ。人としてのお茶目さ。真面目さの生む精神の自由。舞台の空気にあわせて、存在の色が変わる軽やかさ。
原嶋元久さん。我らが愛犬シェリーは、どれほどその可愛らしさで人を幻惑し、どれほどその愛で人を泣かせてきたことか! 俳優としては、毎回、感じやすく柔らかな心を最大限に揺らしてくれる。同じ道を通らない。今の自分を信じて、毎回生きる。それは本番に入ってから外れない道です。とんでもない伸びしろを見せている、伸びしろの限界を感じさせない、頼もしい俳優です。
美羽あさひさん。この人の愛らしさ、この人の包容力、この人のナチュラルな人間力に、どれほどか作品が支えられています。そして、妹のユマが支えられています。稽古で苦労して掴んだ役を、今、舞台で伸び伸びと演じてくれている、その飛躍力に、演出家であるわたしが一番驚いていると思います。笑顔と哀しい顔が行き来するとき、胸がいつも締めつけられます。
サントス・アンナさん。彼女は、今、わたしにとっての「ひばり」。(観た人にしかわからないですね、だから観てほしい。)生きていると抱えてしまうゴリゴリした醜い塊を、美しい詩に変える瞬間を生きてくれる、宝石のような女優。稽古で磨かれて、本番の舞台で磨かれて、輝きがどんどん増していく。「新しい女優」が誕生した、と、わたしは思っています。
===
今日、演出家の小林香さんが観てくださって、終演後お話をして。
ここまで感じ、ここまで理解し、ここまで楽しんでもらえるのだと、飛び上がりたくなるほど嬉しく思いました。
こうして、直接お話できる方はわずかですが、
ともに劇場にいて下さる方が、それぞれにこの作品を受け取ってくださっている、その思いを、すべてありがたく受け止めて、
また、明日、幕を開けようと思います。
明日、千穐楽。三越劇場にて。
13時開演、17時開演です。


10月9日
「マブの女王」初日が開いて、早くも三日目。
様々な反応に喜んでいます。
みな、あまりにそれぞれの反応で。
・ミュージカルとしての美しさに感動してくださる人
・俳優六人の魅力を讃えてくださる人
・パズルがとけていくストーリー展開を楽しんでくださる人
・現代の戯画部分に反応してくださる人
・未来への警鐘に心を動かしてくださる人
本当にいろいろなんですが、
犬を飼っている方には、かなりパンチの強い作品のようです。
だって、犬がその一生の最後に、飼い主にどうしても伝えたいことを渾身で伝える、というお話でもあるので、涙腺の崩壊現象が、わたしの想像以上に起こっているようです。
今日も、わたし自身もたくさんのお客さまをお迎えします。
劇場はあと30分で開場。
今日はどんな出会いになるだろうか?
このときめきがあるからこそ、空いている席があるのが残念でなりません。
どうぞ、ちょっとでも「気にかかっていたぞ」と思われる方、
あと土、日、月、と6回公演があります。
是非是非、観てほしいのです。


10月6日
「マブの女王」仕込み。明かりづくり。
美術家トクマスヒロミに託した、
飛び出す絵本のセットが建ち、
塚本悟さんの照明で、魔法がかかる。
美しい。
美しい。
わたしの夢見た絵本が、実際に、飛び出してきた。
明日は、ここに俳優が立つ。
限られた時間で、最高の最終調整をしよう。
あさっての初日に向けて。

10月3日
「Sleeping Beauties 夢をあやつるマブの女王」通し稽古、ラスト3。
本番の衣裳、かつらをつけ。
照明の塚本悟さん、振付の前田清実さん、音楽の伊藤靖浩さん、
衣裳の友好まり子さんら、スタッフが見守る中、
白熱の2時間。
原嶋元久演じるシェリーは膨大な台詞量。シェイクスピアですか?ってほどの長台詞、スピーディーな会話を、揺れる心と、はちきれんばかりの若さで支えてくれる。
なんたって、愛犬の役です。ともに暮らしてきた犬がイケメン青年になって現れる。お客さまみんな、愛犬シェリーのファンになるに違いない。ずるいくらいに可愛い。
彩輝なおさん演じるマブの女王は、今まで彩輝さんが演じてきた数々の役をすべて彷彿とさせるような、たくさんの顔を持っている。素敵な衣裳もできあがって、惚れ惚れするかっこよさ。そして、作品を愛する心の深さ。おまけに、今まで見たことのないコケティッシュな彩輝さんもたっくさん見られます。
金すんらさん演じるハズは、マブの女王の旦那さん。マスオさん的な愛情たっぷりでお茶目な存在ですが、劇中劇では打って変わって、フランケンシュタインの創ったモンスターを演じてくれます。その異形の集中力、繊細さ、圧倒的な歌声は、この芝居の見どころのひとつです。
サントス・アンナは妹ユマを演じます。観客は、新しい女優の誕生を目の当たりにすることでしょう。ストレートで、振り幅の広い心、心と近い声……。壊れて、立ち上がり、また壊れて立ち上がる、弱く、強い、一人の少女を、まさに体当たりで演じます。今わたしが宝物だと感じる女優。
美羽あさひさんは姉エマを演じます。絵を描くことに没頭し、一人の世界に遊んでいた少女が、揺れる妹を前に、逞しく成長する姿。受け止める包容力が大きな魅力。巻き髪や甘いワンピースの中に隠れている少女の強さを体現します。
沼尾みゆきさんは、マブの女王のお母さん。(お母さんとは言え、妖精だから可憐。)その歌声の美しいこと美しいこと。真面目で正確な女優さんなのに、わたしは思いっきり羽目を外してほしいと望んできました。それがどんどん形になって、あまりにもキュートで稽古場には沼尾みゆきファンが増え続けています。
こんな出演者と、新作を立ち上げる苦労と喜びをともにしてきました。
一人でも多くの方に興味を持って頂き、劇場に足を運んで頂けるよう願っています。

9月28日
19歳の時に、同じ劇団の先輩だった錦織さんが、稽古を見学に来てくださいました。あまりに懐かしすぎて、大声をあげて抱きつきたいような気分でしたが、大事な通し稽古の前の演出家なので、ぐっと我慢。
こうして書いてくださるのは、とてもありがたいことです。
錦織さん、ありがとうございました!
「Sleeping Beauties 夢をあやつるマブの女王」
近づいてきた初日に向け、今日も通し稽古。
どんどん進化を遂げています。


9月22日
激動の仕事場から帰ると、彼女が待っていました。
枕の横で、昨夜は、この足上げポーズで籠におさまり、そのまま眠りにおちていきました。
なぜ後足を上げたまま眠る?!
そして、しょっちゅう寝言も。
稽古中の作品では、愛犬が、夢の中青年に姿を変えて、飼い主姉妹と冒険の旅に出る。
その夢、わたしも見たい。
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9月20日
今日は稽古の半分が振付。信頼する前田清実さんとの時間。
語らずとも受け取り、作品の芯を読み取って、わたしだけではきっと生まれなかった風景を見せてくれる。
「話し合う」という行為の前に、人と人との間に何が必要か、深々と感じ入るような時間だった。
それがなければ、結局「議論」なんて何の意味も持たないでしょ?っていう、とても大事なもののことを考える。
今回の作品には、空洞化した「議論」というやつに向かって、怒り、嘆き、戯画化したシーンを、盛り込んでいる。
それだけじゃなく、びっくりするくらいたくさんのことが、
ひとつの作品に練り上がっており。
あらゆる天災。
あらゆる人災。
神の存在。神を超えようとする人間。
プロメテウスの火を手にした人間の選択。
世界の、過去現在未来と、
絵を描き詩を書く姉妹の、過去現在未来と……。
それがたくさんのミュージカルや文学作品へのオマージュとなって織りあがって……。
今回の作品は、語っても語っても伝わらない。
もう、見てもらうしかない作品。
今を生きるわたしの、すべてが、そこにあって。
稽古場をともにする出演者たちが、大変な共感を持って、それを実現しようと日々を過ごしてくれている。
わたしに出来ることは、今、この問題作であり大エンタメである作品を、
世に問うこと。
初日を、とにかく、開けること。
演劇でしか語れない。

9月18日
「Sleeping Beauties」は、異種格闘技みたいなキャスティング。
わたしは、出演者六人全員、はじめまして。
でも、すでに強い強い結びつきが生まれてる。
稽古場にいる俳優たちが、
みんなそれぞれに演劇を舞台を愛してるってことが、
あっと言う間に、昨日まで知らなかった人たちを結びつける。
そして、演出家に力を与えてくれる。
ちょっと気恥ずかしい言い方だけど、いつもそうなんだ。
9月17日
どんなに苦しいことがあっても、救いがある。
一人で闘っているような気がする時だって、
温かい視線に支えられている。
奮い立つような、どんなにか素晴らしい励ましの言葉を頂いた夜。

9月16日
Sleeping Beauties マブの女王!
個別の抜き稽古、歌稽古、振付など、少しずつ重ねてきた丁寧な稽古。
本日から全員が揃って、ぐいぐいと前進。
自作が俳優の血肉で立ち上がるのを喜ぶと同時に、
演出家は産みの苦しみ。でも、それが楽しくって!
なんとも明るくって、なんとも前向きで、最高のキャスト!
最初の一週間は、血を沸き立たせて大胆な稽古。
次の一週間は、血を鎮めて繊細な稽古の予定。


9月11日
雨続きで、泣く泣く自転車をあきらめ電車で通う日々だった。
ようやく晴れて、意気揚々と自転車に乗ってきたのに、なぜかすり込まれたように電車で帰宅。
明日は稽古休みなので、泣く泣く自転車を迎えに稽古場を目指す。ああ。


9月9日
たくさんの新しい出会いの中で、
激動の毎日。
雨は降り続く。
稽古場の中は晴れている。
わたしを活性化してくれるのは、
力や自信を与えてくれるのは、いつも稽古場。
自宅のデスクより、断然稽古場。
稽古場で生まれる俳優との揺れる時間が、
わたしは本当に好きなんだ。
自宅では、彼女がわたしを見守ってくれている。
小さな籠にからだを押し込めてご満悦。

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