12/3
短い旅の終わりに。
機内での覚え書き。
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旅に出るのは、準備も面倒だし、わざわざ生活のリズムを崩すようなものだけれど、
旅に出なければ出会えないものがあると、ことの大小を問わず、感じた数日だった。
NYに滞在した時間はもちろんのこと、
帰国の飛行機の中でも、思いがけない出会いがあった。
出発は11月帰国は12月でビデオプログラムの入れ替えがあり、
「アルトマン」というロバート・アルトマン監督のドキュメンタリーを見つけた。
アルトマンのファンだったわたしは迷わず見た。
3回見て、それでも足りず、今4回目を見ている。
自分がどれほど彼のことが好きかを思い知りながら。
どれほど共振、共感できるかを再確認しながら。
好きな芸術家が、生きて、死んでいくことを、
まだ生きているわたしが、フィルムの中に何度も追うこと。
……映画は砂の城を作るのと同じだ。
大きな城を作っても、やがて波がやってきて城を運び去る。
でも、砂の城は皆の胸の内に残る。
アルトマンには変な作品がいっぱいある。
わたしは変な作品ほど好きかもしれない。
人生を切り取る視線の屈折度が、いつもわたしには、はまる。
彼はこんな風に言う。
……自分の創りたいものを創る。
時に人々はそれを望んでいるし、時には望まない。
それが合えば成功。
でも、成功を目指すのではなく、自分が創りたいものを創る。
わたしはその点でぶれない。
最後になった作品を創りあげた時に、インタビューに答えている。
「死は、Happy Endingでしょうか?」
「Happy Endingじゃないだろうね。
Happy Stopかな……。」
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旅に出るのは、楽しい。
人生が億劫になってしまったら、
面倒な旅に出ることさえやめてしまうかもしれない。
旅に出るように、作品を創ろう。
創ってみなければ出会えない世界、出会えない自分がいる。
面倒な手続きを超えて、何度も旅に出よう。
いつ訪れるかわからない、わたしのHappy Stopまで。
言葉が一人歩きしてかっこよすぎるけど、
まちがいなくそんな気分。
テーマ曲は、クレジットに目を凝らすと、
なんと、アルトマン自身が作詞作曲したもののカバーだった。
この詞に、胸を打たれた。
ざっくりと、記憶のために書き起こす。
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やり直しましょう もう一度最初から
哀しい目に遭ったけれど 昔のことは忘れましょ
二人が過ごした場所を もう一度訪ねて
やり直すのよ もう一度
やり直しましょう
お互いのプライドを捨てて
心の内を 気遣いあうのよ
そうすれば 再び愛が紡がれるはず
やり直しましょう もう一度
一度は愛し合ったわたしたち
あの時はあきらめてしまった
二人で愛を握りしめる前に……
だからもう一度試しましょうよ
そしてまた始めるの
今度こそ続くように
やり直しましょう 過去にこだわらず
何があろうと愛し合って
やり直しましょう もう一度
12/2
「春のめざめ」は四季版を見ていたので作品は知っていたが、
デフシアターの演出を是非観たかった。
「TRIP OF LOVE」は、内容やプロデューサーが日本人という話題性もさることながら、原田保さんの照明を見たかった。
ほかにも、生で聴きたい歌い手がいっぱいいた。
……と、心残りはたくさんあれど、
(心残りは、近い再訪で果たすことに!)
本日の観劇は最高に幸せ。
「夜中に犬に起こった奇妙な事件」
エセル・バリモアという古く由緒ある美しき劇場に、
あの現代的でシャープな舞台美術、照明を感じる喜び。
卓越した演出と、俳優たちの溢れる感情と冷静なコンビネーション。
脱帽。
芝居を観る喜びが満載でした。
同時に、演出家として、今の自分では圧倒的に物足りないぞと、
先に進む闘志が湧きました。
明日は帰国の途につきます。
12/1
NYに来ると、どうしてこうまで歩きたくなるのか?
歩き疲れて1時過ぎに眠りについたら、4時に起きてしまう。
”Sleep no more"を見たせいかしら?
眠りと仲良くなれない。
すっかり覚醒していて、airを広げ、台本に向かう。
ここまできてworkaholic。
今日はいよいよメインイベントのミーティング。
緊張してるのかな。
7時を過ぎて、少しだけ雨中を散歩。
あったかいコーヒーとマフィンを買って、
午前7時40分現在、
仮眠をとるタイミングをみはからっている。
11/30
アメリカらしいショーが見たくて、ラジオシティーに行ったのです。
トニー賞の授賞式が行われる場所、ってだけで、
一度は行ってみたいじゃないですか。
恒例の「クリスマス・スペクタキュラー」を見たのですが、
圧倒されました。
サムネイルの写真は、人間ドミノ倒しのシーン。
ゆっくりと、ゆっくりと、やがて勢いよく、
しっかりと力学に基づいた動きを、人の身体で実現。
それも、広い舞台の間口いっぱい!
個人主義が根づいた国で、
一糸乱れぬ、ラインナップダンスの美しさ、感動です。
映像と一体化した、無数のサンタの整列にワクワク!
下のサイトに、いっぱい写真が出ています。
観光客向けかと思っていたら、
見所満載の素晴らしいショーでした。
仕掛けも凝っていましたが、何より、人間力。
人が、人を笑顔にするために賭けた、
情熱と時間が思いっきり感じられて、最高。
11/29
今日も喜ばしい一日。
Brooklyn Bridgeからマンハッタンの夜景を眺めつつ、Burlesqueの夜。
Fun HomeとRadio City。
”Color of Life"を初演したDorothy Strelsin 劇場の楽屋口を訪ねたり。
台本を広げるホテルの部屋はとっても狭いけれど、
ハドソン川まで見渡せる眺望でご機嫌。
11/28
快適なフライトでNY到着。
思ったよりずっと暖かくて、雨模様。