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2016年8月15日 (月)

▶芸術の海

8月15日を思う。
仕事のためではあるが、
この1ヶ月は太平洋戦争を、ある側面から知り直す日々だった。

今日は、家に籠もって書く、事務的な書き物をする、翻訳する……
普段なら、愚痴のひとつもこぼしたくなる忙しさだが、
こうして表現の仕事ができている喜びを、ひしひしと感じる。

昨月NYにShort Tripした帰りの飛行機で、
国を超えて、時代を超えて、
生きる歓びが脳内で溢れかえるような時間を過ごした。

タルコフスキーの「惑星ソラリス」の中に、
「想念の海」人間の潜在意識を内包する海が出てくるが、
地球に生きた人々の体験してきた、あらゆる苦難と歓びは、
芸術という海の中に溶け込んでいると思う。
わたしたちは、いつでもそこで泳ぐことができる。

以下、機内でのメモ書き。

====
帰りの飛行機には、何かしら個人的なドラマがある。
去年の12月は、ロバート・アルトマン監督の生涯を描いた映画を観た。
一回では足りず三回見た。
三回めは、台詞と歌詞の書き起こしまでしてしまった。
帰国後、テーマ曲から想像が膨らんで、30分の短編まで書いた。

今回は、機内でパソコンに向かって仕事するだけで、
それで旅は終わるかと思ったら、やってきた。

ブロードウェイで、American in Paris をようやく観たのだが、
素晴らしいダンスシーンに酔いながらも、
その喚起力に驚きながらも、
ガーシュインの音楽に出会い損ねた気がしていた。
わたしがあまりに、ダンスに魅入っていたからか、
道具とプロジェクションの動きを面白がっていたからか、
バンドの編成によるものか……。

機内のVIDEOサービスの中に、
小澤征爾のヴァルトビューネ2003という番組を見つけて聴いてみると、なんと演目はAmericai in ParisとRhapsody in Blue、Concert in Fだった。
ガーシュインも、小澤さんも、盲目のピアノソリストも、
人生のすべてをそこにぶち込んでくるみたいに、
絶望と希望が深くって、強く、ふくよかで、明るい。
生きている歓喜が爆発する。艶やかに。
音楽家たちは、個として自由でありながら、絶妙に寄り添い合う。

わたしの脳内では、
American in Parisに出ていたダンサーたちが踊りはじめる。
脳内で、場所と時を超えて重なり合う。
たくさんの芸術家の仕事が、重なり合う。
もう、人生の祭典みたいなことが、脳内で起こってしまう。

生まれ落ちたからこそわかる、歓喜の数々。
いずれ死ぬ身だからこそ
生きているうちにその身で表したい歓喜。

生まれてしまったからこそわかる、辛苦の数々。
いずれそれも終わる身だからこそ
生きているうちに残したい爪痕。

妄想の芸術の祭典を開いていると、
世の中のあらゆる物語も同時に立ち上がってきて、
息苦しいほどの感動を覚える。
人間が美しく、素晴らしいと、信じる、
めくるめく瞬間の連続。

芸術の力。

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