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2016年9月

2016年9月28日 (水)

▶最近の仕事

稽古休み。
「ダニー・ボーイズ」の最終改稿。(done!)
わたしは、書きたいものが見えてからは書くのが早い。
でも、書き上げてからの修正には時間をかける。
事情が許す限り、急ぎ仕事をしない。
落ち着いた時間がまとめて取れる時間を待っていた。
またまた朝からこの時間まで、原稿にかじりつく。
日付が変わらないうちに仕上げた自分を褒めてやろう。

そして。
最近わたしが、稽古と呼んでいるのは、
「スカーレット・ピンパーネル」のことだ。
演出補として関わっている。
8年前に演出家として独立してから、演出と脚本以外の仕事は請けてこなかったのに……この作品は、何らかのご縁があったのだろう。
素晴らしく仕事のできる演出助手、伴眞理子さんがついているので、
わたしはわたしだから出来る仕事を遊軍で。
演出のGabrielさんとチームのために、動く日々。
出演者が、皆前向きで、懸命で、魅力的!
たくさんの出会いを喜んでいます。

翻訳は木内宏昌さんで、
わたしは木内さんの訳文を演出家のために逆翻訳する仕事を、
7月から続けている。
今も、稽古場では、ことあるごとに、英語原文に立ちかえる。
日本語で考えていると、英語を聞く/話す能力が一向にあがらないわたしだけれど、読み下しの勘は戻ってきた。
この人生では置いてきてしまったと思っていた英語が、
今さら楽しくなってしまっては、
人生、いくら時間があっても足りません……。

2016年9月20日 (火)

▶「この泡の消えるまで」脱稿。

稽古から帰って月曜の夜、火曜日、そしてもう水曜、と、
またまたひたすら書いていた。第一稿を書き上げた。
小さな小さな作品なのに、重くて重くて、
書き上げるまで、肩にずっと荷物をしょっているみたいで、
疲労困憊。
書こうと思っていたものと、全く違うものが書き上がった。
やはり、「今」が反映する。
最後の2ページは、泣くようなシーンじゃないのに、
泣きながら書く。

明日から、今の現場に集中。
そして、次の仕事の、準備また準備。
シャンパンを開けたい。
きっと空けられないけど、開けたい。

2016年9月18日 (日)

▶「Baked Hotel」観劇

「Baked Hotel」観劇。
http://csb-international.info/stage.html

人はみな……
いや、演劇の仕事しかわたしは知らないから、
この仕事をする人はみな……
と言おう。
いつも途上だ。ゴールも完成もない。
さらに、記録を競うものではないから、
すべては観客に委ねられる。
だから、いつも手探りの、ゴールが見えないままの、途上。
でも、作品毎に、俳優もスタッフも、同じゴールを目指す。
一緒に夢見るから、走れる。
一緒だと楽しくて、走れる。

今日の表現者三人、
蔡暁強、吉本真悟、大野幸人の、
途上の、最高を、わたしは劇場で感じたのだと思う。

それぞれのこれまでの努力や憧れが支えている身体。
全く別々の三人が出会ったからこその溢れ出るもの。
優しさ。清潔感。
等身大の心と体が、日常の延長線上でほころび踊る美しさ。
超絶技巧なのに、等身大。
踊っていると同時に、存在していると見せてくれる、物語の魅力。
筋肉の強靱さは、筋肉のしなやかさと表裏一体。
同じことが、心にも、言える。
しかも、出来上がったものを観ているだけじゃなく、
あらゆる瞬間が、偶然の美しさを帯びていて、ドキドキする。

ひと言で言ってしまえば、

何て美しい三人!

ああ、こいつらと友達になりたい!
という気持ちと、
いつまでも憧れ続けたい!
って気持ちが、同居する。

でも、ありがたいことに、わたしは同じ仕事をしているから、
彼らの途上に、もしかしたら、伴走できるかもしれない。

年齢で得るもの、喪うもの。
経験で得るもの、喪うもの。
表現者は、プラスとマイナスで進化し続ける。
本当に、これからが楽しみ。

何役も演じ分けてみせてくれた出演だけでなく、
物語を産みだし、きっと演出家の目線でトリオの先頭を走っていただろう、大野幸人に、心から拍手を送りたい。
(前略、大野幸人君。
君は、本当に面白い奴だ!って、
何度も笑って、何度も感心したよ。)

明日19日、14時、千穐楽。
当日券が出ると思います。
ダンスをふだんあまり観ない、友人にも、
是非、ふらりと立ち寄ってみてほしい!
とっても幸せな気持ちになれます!

2016年9月17日 (土)

▶HARD LESSON OF LIFE

両親の不調、仕事、最近、忍耐を強いられることが多い。
でも、そんな時に必ず思い出す、P・オースターの小説の一節。
(記憶で書いているので、内容だけ引用)
「人生で最も早く手に入って、一番長く忘れない学問。
 それは、経験大学で取得する、H・L・L の学位。
 人生のつらい教訓……HARD LESSON OF LIFE。」
これを思い出すと、少し楽になる。
わたしは今、H・L・Lのさらに高い学位を狙っているのだ。
きっと、生きてる限り、喜びとともに、
この経験大学から卒業することはできない。
だったら、取れるだけ学位を取ってやる!

と、こんな風に、これまで親しんできた文学や芸術が、
辛い時にどれほど支えてくれることか!
ありがとう、言葉たち、ありがとう、音楽たち。
ありがとう、H・L・Lをたくさん取得し、先を生きた、
愛する人々よ。

2016年9月14日 (水)

▶母はいくつも奇跡を起こす

両親にもらった最大の宝物は、
自分の好きなことをして生きる自由。

東京で仕事をして、ちっとも実家に顔を出さない親不孝な娘に、
SOSの連絡があった。
娘は忙しいだろうからと、
いつも父が気を遣ってくれていて、
めったには来ないSOSが、やってきた。

スケジュールに自由のない仕事をしている今、
どう考えても休んではいけない日だったけれど、
無理を言って、実家に日帰りし、母に会った。
仕事にちょっと歪みは出てしまったけれど、
今日、母は別人のように元気になったと、父から報告があった。
何より、母が快方に向かったことを喜ぶ父の弾んだ声が、
最高にうれしかった。
母は、何度も奇跡を起こしてきた。
生きる力がある。
昨日は、枕元に座って手をつないでいただけなのに、
わたしの力も分けてあげられたらしい。
親子なのだな。

この秋は、ひたすらに忍耐の仕事をして過ごしているが、
命に関わる時間に直面し、
限られた時間を生きていることを、
改めて考えた。
しょっちゅう考えていることなのに、
新しい血を入れたみたいに、体に近い思考になる。

我が心の疲れはピーク。
でも、明日はOFFだから、書く。
書くことは、いつも偶然の堆積だから、
きっと「今」が顕れるだろう。
どうぞ、その「今」が美しいものであるようにと願い、
眠りで、集中のための体力を取り戻そう。

母の生命力を喜びながら。
父の優しさに感謝しながら。

2016年9月 4日 (日)

▶ワーカホリック

稽古OFF。執筆のための一日。
今日読んだ本は、あまりに感動的で気づきに満ちていた。
書棚で10年ほども眠らせていた本を、こうして一日かけて読む日があったりする。こう

して出会うのだな。
そして、ある有名な交響曲をまとめて聴き、
総譜を追いながらまた聴いた。
今まで単なる名曲に分類されていたものと、ようやく出会った。
(これでいい演奏を聴きにいけば、本当に出会えるのだろう。)

このところ、仕事が順調ですね、と、
よく言っていただくのだが、
人生そんなには甘くなくて、
この夏は、泣いたり怒ったり、悩んだり、混乱したり、
大変だった。
仕事しかしない毎日なので、
それをほぼ全て知ってくれているマネージャーが、
たった一人の大親友であり、
グレートマザーみたいな存在になっていて、
何度も何度も助けてもらっている。
助けてもらって、
また進んで、片時も休まなかった。
そんな不思議な夏も終わり、
今は虫の音に包まれて、また仕事している。
ワーカホリックもいいところだけど、
作品は、いずれ形になる。
その喜びがすべてで、毎日がある。

古い友達と久しぶりにつながって、
「石丸さんらしい生き方ですね」
と言われたが、
果たして本当にそうなのかは、まだわからない。

突然誰かと出会って、結婚したりして、
人生の色がまったく塗り変わるのだって、
もしかしたら、わたしらしいのもしれない。

わからないけれど、
今は、悩んでも辛くても、ここにいるのが、きっと楽しいのだ。

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