▶新国立劇場にて「フリック」
新国立劇場にて「フリック」
あと2ヶ月どんな出会いがあるかわからないけれど、
本年度、個人的に暫定ベスト1。
昨年のベスト1がブロードウェイで観たThe Curious Incident of the Dog in the Night-Timeだから、やはりわたしは、こういう作品が好きなのだな。
時の操作と、原風景と、細やかな人間描写と、演劇的世界観のはっきりしたもの。
早めに劇場に入ったら、開演まで空舞台に釘付け。
同じく映画館が舞台だった「タンゴ・冬の終わりに」朝倉摂さんの美術を、昨夜さんざん
朝倉さんの映画館が大胆な汚しで世界観を作っていたのに較べ、
「フリック」は、本物の強みでした。あれ、どこの劇場の椅子だろう? 汚しがないな、
もう、その時点で、持っていかれてます。
わたしは、人の記憶が堆積する場所に弱いので。
劇場もそうだし、教会とかも、出会うたびに、入って、打ちのめされる。
奥村泰彦さん美術。MONOの方。初見。出会いたい。
赤い椅子が、最後一瞬、ナトリウム灯で照らされるのは、わかっていてもやられます。あ
そして、戯曲。
ひたすらに、好き。好み。
時間の切り取り方。
物語などなくても、色濃く演劇的な時間の堆積。
記憶に揺さぶりをかけられる。
甘すぎず、辛すぎず、目線が上からでも下からでもなく、
あの世代のありのままを真っ直ぐ見てる。
ちなみに、わたしには、主役エイブリーの映画の趣味が、かつての自分にドンピシャ。
出してくる俳優のチョイスも全部、なるほど、納得、そうきたか!にこにこしちゃう。
俳優。
とにかくソニンがいい。
他者を演じることに、大きな恐怖心を持った末に、彼女が選ぶのはいつも大胆で勇気ある
自分の心と体を揺さぶって、他人を演じるバランス感覚と勇猛果敢さは、今、他の追随を
出会う役毎に発声ごと変えてくるので、出会う度に新鮮。
出る芝居、全部観たい。
木村了さんは、8月にTARO URADSHIMAで観ている。俳優って、一本観ただけじゃわからない。エイヴリーの
電話でのカウンセリングシーンがいい。とてもいい。
菅原永二さんは、彼の存在で、この作品が翻訳劇だってことを忘れさせてくれた。時間が
NY初演の演出家は、FUN HOMEの演出家、SAM GOLDだったのね。ああ、悔しい。世界にはどれほど魅力的なクリエイターがいるんだ
嫉妬して、元気になる。
いい夜だ。