« 2016年10月 | トップページ | 2016年12月 »

2016年11月

2016年11月30日 (水)

▶「戦火の馬」を観て

NTL「戦火の馬」をようやく観て、
自分が選んでいる仕事の可能性に惚れ惚れする。
馬の筋肉の顫動、躍動に、釘付けになったままの3時間余。
言葉を超えたコミュニケーションに涙しながらも、これを生み出すためのクリエイターた

ちのコミュニケーション量を想像する。
マリアン・エリオットやジュリー・テイモア、
女性演出家たちの瞠目の舞台を観て、大いなる幸福に酔い、心の片隅ではちょっと自分の

現在に絶望していたりする。これは、とても大事な時間。

コンサートや再演の準備を進める中、小規模ながら新作の準備を着々と進めている。
寒くなってくると、膝の上には、しょちゅう白いかたまりが……。
深夜の仕事のお供、今日は穏やか。

マウスを持つ右手に頭を載せるのが好きだが、
それじゃあ仕事にならないので、
肘掛けに頭を載せることを、彼女に粘り強く推奨してきた。
最近、ようやくこの奨めを受け容れてくれるようになった。
……にしても、なんて幸せそうに寝るんだろう。


「NTL「戦火の馬」をようやく観て、
自分が選んでいる仕事の可能性に惚れ惚れする。
馬の筋肉の顫動、躍動に、釘付けになったままの3時間余。
言葉を超えたコミュニケーションに涙しながらも、これを生み出すためのクリエイターたちのコミュニケーション量を想像する。
マリアン・エリオットやジュリー・テイモア、
女性演出家たちの瞠目の舞台を観て、大いなる幸福に酔い、心の片隅ではちょっと自分の現在に絶望していたりする。これは、とても大事な時間。

コンサートや再演の準備を進める中、小規模ながら新作の準備を着々と進めている。
寒くなってくると、膝の上には、しょちゅう白いかたまりが……。
深夜の仕事のお供、今日は穏やか。

マウスを持つ右手に頭を載せるのが好きだが、
それじゃあ仕事にならないので、
肘掛けに頭を載せることを、彼女に粘り強く推奨してきた。
最近、ようやくこの奨めを受け容れてくれるようになった。
……にしても、なんて幸せそうに寝るんだろう。」

▶「Angel」再演に向けて始動

「Angel」再演に向けて始動。
1月21日22日に向けて、どこまでも、俳優大野幸人の可能性にこだわります。
そこに、わたしが創ってきた舞台の中でも指折りの美しい瞬間が待っているんです。
http://angel-theater.info

エンタステージに掲載された初演の観劇レポートは、とてもうれしいものでした。
初心を忘れず、作品を育てたい。

http://enterstage.jp/sp/news/2016/06/005193.html

2016年11月22日 (火)

▶悪いものをすべて出す

三日間、どうしようもなくダウンしました。
私塾のレッスン1回、
観劇1公演、
ライブ1公演、
心待ちにしていた食事会、
とてもとても大事な仕事1日分、
わたしの人生から消えました。
進行中の仕事、三日間止まりました。
迷惑をかけ心配をかけ、
心から反省しています。
大反省です。

三年ほど前なら、鬼の霍乱!
とでも言うところですが、
いやいや、そろそろ大人にならなければ。
わたしは鬼じゃない。

これからは、上手に休める人でありたい。

と言いつつ、明日からまたしばらく休みませんが、
心の持ちようです。
がむしゃらに仕事を進めてしまう夜の時間に、
ほっとひと息つける環境を、少しずつ整えたいなあ。

生きてて、食べて、自分の足で歩いている。
こんな年齢になっても、夢を原動力にできる。
ああ、痛みと孤独の三日間を過ぎて、
わたしはなんて幸せなんだ!

2016年11月13日 (日)

▶死と永遠を描く

「この泡の消えるまで」
初日開けて3日。すでに4回を終えた。
わたしの待ち望んだ世界にぐっと近づいただけでなく、
金すんらさん自身の魅力が、わたしの想像の外からやってきて、
作品を色づけてくれている。

死を描いているのに、軽やかでありたい。
色分けされない深味のある喜怒哀楽を見たい。
見ていて笑顔になる時間でありたい。
一杯のグラスの中に、永遠の時間を閉じ込めたい。
わたしの贅沢な夢を、伊藤靖浩さんの音楽に飾られて、
あの手触りのある空間に生み出してくれている。

「イケメンの舞台が好き!」
と言って憚らないわたしの若き女性客が、
素晴らしい洞察力の手紙をくれた。
箱入りのシャンパンを添えて。
(この芝居は、チェーホフが人生の最後に飲んだ一杯のシャンパンに込められた永遠のお話。)
箱を開けた瞬間、わたしは呟く。
「わたし、イケメンじゃないのに……。」
2度目の観劇の感想もしっかり口頭で伝えてくれた後、
「今から2.5を見てきます!」と駅方向へ消えていった。


「「この泡の消えるまで」
初日開けて3日。すでに4回を終えた。
わたしの待ち望んだ世界にぐっと近づいただけでなく、
金すんらさん自身の魅力が、わたしの想像の外からやってきて、
作品を色づけてくれている。

死を描いているのに、軽やかでありたい。
色分けされない深味のある喜怒哀楽を見たい。
見ていて笑顔になる時間でありたい。
一杯のグラスの中に、永遠の時間を閉じ込めたい。
わたしの贅沢な夢を、伊藤靖浩さんの音楽に飾られて、
あの手触りのある空間に生み出してくれている。

「イケメンの舞台が好き!」
と言って憚らないわたしの若き女性客が、
素晴らしい洞察力の手紙をくれた。
箱入りのシャンパンを添えて。
(この芝居は、チェーホフが人生の最後に飲んだ一杯のシャンパンに込められた永遠のお話。)
箱を開けた瞬間、わたしは呟く。
「わたし、イケメンじゃないのに……。」
2度目の観劇の感想もしっかり口頭で伝えてくれた後、
「今から2.5を見てきます!」と駅方向へ消えていった。

今回の小さな空間での俳優と観客の出会いを傍らから見ていて、
演劇が、これからさらに元気になる可能性を感じる。

一人芝居ミュージカル短篇集vol.1
詳細 ur2.link/z5E1
ご予約 ur2.link/z5Et」

2016年11月10日 (木)

▶「この泡の消えるまで」

小道具を本番用に作り変えていたら、なんだかが気合いが入ってしまい、こんな時間。
今回の芝居は、金すんらさんの魅力のひとつでもある、恨(はん)のエネルギーを封じ込

めて、世界への愛情とシニシズムの間に、悠然と立ってもらうもの。
稽古は時に喧嘩腰。ぶつかりあうけど、
金さんが本質的な優しさを持っているので、
手をとりあったまま、ここまで来ることができた。

明日もジプシー稽古してから、本番会場へ向かう。
でも、あ、雨が、雨が!
小道具すべて自転車でえっちらおっちら運ぶ予定が、
またわたしはタクシーに乗るのか!?
このところ、小道具を運ぶと言っては、時間がないと言っては、
寒い懐からタクシー代ばっかり出している。

明日初日なんだから、そんなこといいじゃないかって思えず、
タクシー代を使いすぎる自分を反省してがっくり肩を落とすわたし。
うーん。うーん。うーん。うーん。
アントン(チェーホフ)様。
なんでこんなに、我々はちっぽけなんでしょうか?
わたしは、あなたの笑い話の登場人物のひとりです。

=====
「この泡の消えるまで」

ドイツのホテルで療養中のチェーホフを、深夜、発作が襲った。
かかりつけの医者がやってきて、カンフル注射と酸素ボンベでの吸入。
脈はどんどん弱くなる。
さらに新しい酸素ボンベを取り寄せようとした医者に、
チェーホフは言った。
「それが届く前に、僕は死んでいますよ」
医者は、ボンベの代わりに、一本のシャンパンを注文した……。
人生の最後を飾る、一杯のシャンパンのグラス。
その向こうにチェーホフは何を見、何を聞いたのか?

=====

2016年11月 8日 (火)

▶怒鳴っちゃったなあ……

怒鳴っちゃったなあ。
口の中が苦いなあ。
そうしないと伝わらないことがあったからなあ。

怒鳴ったのに、見学している方にかっこいいと言われて、
自己演出して自分を見せてるみたいで恥ずかしかったなあ。
でも、その方には、きっとわたしが怒鳴らなきゃいられなかったエネルギーが見えたのだ

と、よい方に解釈する。
そうしないと、苦すぎる。

演出家は、
作品を具現化する時には、絶対的に存在して、
作品が上演される時には、一切存在が消えた方がいい。

自分が見たい景色に、
馬車馬のように牽引しても、
登場人物と俳優が選んだ旅に見えなければ。

ただひたすらに俳優を信じるというわたしの得意技の登場だ。
叶え、叶え、と俳優に託して、
また明日。

2016年11月 4日 (金)

▶脳髄の広間

徹子の部屋での、中村メイコさん。
ご主人神津善行さんとのことを軽やかに語る。

徹子さん「お二人のベッドルームは、今も一緒ですって?」
メイコさん「だってね、お互いが死んじゃったことを気づかないなんて、やっぱり、エチ

ケット違反だと思うのよ。
だから、年取ってからはやっぱり、並んで寝た方がいいと思う。」

父と母のことを考えていたからか、
この幸せな言葉に、しばし時間が止まった。
あらゆる思いやりや忍耐の時間の先に、宿る幸せ。
連続した時間が生む、
生活の細部に宿る、純度の高い小さな幸せのあれこれ。

もちろん、宿らないこともある。
人生は、そうそう公平ではないからね。
でも、海馬あたりの短期記憶にはなくても、
脳髄格納の長期記憶に昇格したものが、きっとたくさん。
そこに探しにいけばいい。

そういえば、1月に再演する「Angel」は、そんな話でもある。
脳髄の広間で、幸せと再会する話。

主人公は、昭和に愛されたアイドル。
一世を風靡したあと失踪して、
まるでサリンジャーのような蟄居を始める……。

今自分が書きたいことが、
今を生きる俳優の血肉になって、
観客に愛されるという喜びを、この公演では覚えた。
再演で、また育てよう。

「徹子の部屋での、中村メイコさん。
ご主人神津善行さんとのことを軽やかに語る。

徹子さん「お二人のベッドルームは、今も一緒ですって?」
メイコさん「だってね、お互いが死んじゃったことを気づかないなんて、やっぱり、エチケット違反だと思うのよ。
だから、年取ってからはやっぱり、並んで寝た方がいいと思う。」

父と母のことを考えていたからか、
この幸せな言葉に、しばし時間が止まった。
あらゆる思いやりや忍耐の時間の先に、宿る幸せ。
連続した時間が生む、
生活の細部に宿る、純度の高い小さな幸せのあれこれ。

もちろん、宿らないこともある。
人生は、そうそう公平ではないからね。
でも、海馬あたりの短期記憶にはなくても、
脳髄格納の長期記憶に昇格したものが、きっとたくさん。
そこに探しにいけばいい。

そういえば、1月に再演する「Angel」は、そんな話でもある。
脳髄の広間で、幸せと再会する話。

主人公は、昭和に愛されたアイドル。
一世を風靡したあと失踪して、
まるでサリンジャーのような蟄居を始める……。

今自分が書きたいことが、
今を生きる俳優の血肉になって、
観客に愛されるという喜びを、
この公演では覚えた。
再演で、また育てよう。」





▶憤怒の橋と、この写真をめぐる嘘と本当。   そして、『この泡の消えるまで』

==憤怒の橋と、この写真をめぐる嘘と本当。
  そして、『この泡の消えるまで』について。==

晴天。
白猫は部屋にまぎれこんだカメムシに夢中。
臭いが気になるのか、接近戦が続かず、苦戦している。
わたしは心の中を断捨離中。
エネルギー源は、憤り。
目指すはその向こうになみなみと溢れている創作欲求。
まずは、あの愛情の泉に向けて、
憤怒の橋を、もう二度と渡らねえぞ!と、かち割りながら歩く。
気をつけないと足を踏み外すけど、
慎重に、というよりは、足取り軽く進む。

先日、ホームに入って一ヶ月になる母に会いにいった。
2005年から在宅介護を続けてくれた父の、苦悩の選択。
父は心底寂しそうで罪悪感さえ抱えているが、
顔色はよく、体調は上向きに見えた。
本当に、共倒れになるところだったのだ。

ホームで母は、誰ともしゃべらないらしい。
昼間は車椅子に乗って共有スペースで過ごすのだが、
一人でずっと黙って時を過ごしているらしい。
あの、ひまわりみたいに元気で、明るくっておひとよしで、誰からも好かれた母が。

わたしが行った時は、もつれる舌を頑張って使って、
一生懸命おしゃべりをしてくれた。
そして、歌ってくれた。
不思議なことに、しゃべる時にはもつれる舌が歌う時には上手に動く。とってもクリアな母音。音程もしっかりしてる。
声帯は、いっぱいしゃべって歌っていた頃をまだまだ覚えているのだ。
この間は「我は海の子」がお気に入りで何度も歌ってくれた。
ホームの童謡歌集を出してきて、何曲か一緒に歌った。

わたしが行ったことは、より母の孤独を大きくするのは確実だと気が滅入り、それを父に話すと、短期記憶がダメになっているから、わたしが行ったことも明日は忘れているかもしれない、と父は言った。

一生を生ききって、傍目からはただ生きているだけに見えるかもしれない人のくたびれた体の中に、魂は、脈々と生きている。

この写真には、嘘と本当がいっぱい入っている。
わたしは心中で泣きまくっているし、
母は頑張って笑っている。ほら、嘘だ。
でも、母と娘で思いっきり明るく笑ってきた年月が呼んできた現在だから、全部、本当。
「時」は、正直者で、嘘をつけない。

わたしはそんな母の毎日に寄り添うことをしていない。
不肖の娘に出来ることは、たくさんの魂を真摯に描くことのみ。

11月11日に初日の「この泡の消えるまで」は、
まさにそんな魂を、明るくパワフルに描く作品です。
ここ、強調。♡♡明るく、パワフルに♡♡描く。
長い文章の最後に宣伝を書いても誰も読まないね。
でも、書いておこう。

==========

ドイツのホテルで療養中のチェーホフを、深夜、発作が襲った。
かかりつけの医者がやってきて、カンフル注射と酸素ボンベでの吸入。
脈はどんどん弱くなる。
さらに新しい酸素ボンベを取り寄せようとした医者に、
チェーホフは言った。
「それが届く前に、僕は死んでいますよ」
医者は、ボンベの代わりに、一本のシャンパンを注文した……。
人生の最後を飾る、一杯のシャンパンのグラス。
その向こうにチェーホフは何を見、何を聞いたのか?

「この泡の消えるまで」
作・演出 石丸さち子 作曲 伊藤靖浩
出演 金すんら

« 2016年10月 | トップページ | 2016年12月 »