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"Natasha, Pierre and the Great Comet of 1812" は、
二階席の後ろから二列目という深い席で観た。
Imperial Theatreという大きな箱全体を、
大きなキャバレー大きなサロンに見立てる演出は気配りが細部にまでわたっていて、後部
席上部席でも前のめりに楽しめた。
劇場の天井全体にトラスが仮設してあって、
手作り風のシャンデリアが幾つも吊ってある。
シャンデリアと同じ色味の電球も無数に。
二階席の後ろにまで。
そして、客席の中にはサイドテーブルが幾つもしつらえてあって、
可愛いスタンドが置いてある。
このすべてのシャンデリアと電球が昇降するし、
スタンド含めすべて繊細に、あるいはリズミカルに調光される。
わたしがこの公演を心に留めた理由はもうひとつ。
わたしの前の10席くらいが空いていて、
その真ん中に、杖をついてやってきた黒人のお婆さんが座った。
上演中たびたび電球やスタンドが客電としてつくので、
近くにいるお客さんと芝居を共有している感覚が生まれる。
Great Cometにはノリのいい曲がたくさん用意されているのだが、
前のお婆さんは横のお客さんがいないことをいいことに、
上半身をリズムに乗せ、膝に横に載せた杖を小粋に揺らして踊り続けていた。姿は踊って
心の中で伸び伸びと踊っていることは後ろ姿だけでわかる。
最高のお客さまとともに、わたしは芝居を楽しんだ。
サリンジャーの「フラニーとゾーイ」のラストシーンで、妹フラニーに兄ゾーイが、En
自分たちが仕事をするのは、その向こうにいつも楽しみに見てくれている足の悪いお婆さ
わたしの目の前で、足の悪いお婆さんが、
最高にショーを楽しんでいた。
そんな観劇。
わたしがいつも「演劇の神様」と呼んでいる存在は、
こうして劇場のあちらこちらに点在している。
3/12
学生時代から20年以上通ってきた本屋、書原に立ち寄ったら、
閉店していた。
ここの原稿用紙を模したブックカバーが大好きだった。
昨年のColor of Lifeが終わった時は、
長らくこの本屋に居座って、四人の俳優に送る本を選び、
ブックカバーの原稿用紙四百字におさまるように手紙を書いた。
今思えば気恥ずかしい贈り物だが……。
最近は書棚が減る傾向の海外文学が充実していて、
かなり趣味に走った珍しい書籍が多くって、
わたしに数々の出会いをもたらした書店だった。
愛する場所が、ふいに消えている、そんなことの繰り返し。
いつもある、いつも待っていてくれると思ったら大間違い。
何もかも。
ショックで自転車でふらふらしていたら道を間違えて、
桜の名所で有名な公園に出る。
すでに開花を迎えている木もちらほらで、
また春が来ることをうれしく思う。
家に辿り着いたら、
自転車の音を聞きつけて必ず玄関までお迎えにくる愛猫の、
変わらぬお迎え。
変わらないことの愛しさに守られ。
変えることで人生を楽しむ勇気を喪わず、
また先に行こうと思う午後。
午前中からワークショップ。
帰宅して確定申告。
一日を完遂して白猫と親しむ時間。
午後、一時間の仮眠をとった。
夢を見た。
いくつもの懐かしい劇場の楽屋がワンフロアにおさまった、
迷路のような巨大な楽屋。
一部屋一部屋に、色濃い記憶をくすぐられる。
のれんだったり、花の匂いだったり、賑やかな話し声だったり。
親しい俳優、すでに鬼籍に入った方たち、
様々な人に会う。
なぜかわたしにも自分の楽屋があって、
うたた寝をして起きたら、もう楽屋迷路は真っ暗。
追われるように廊下をさまよっていたら、
煌々と電気のついている楽屋があった。
中をのぞくこともできず、
のれんの前で立ちすくんでいるところで目が覚めた。
あれは、どなたの楽屋だったんだろう?
中には、誰がいたのだろう?
たった一時間の眠りなのに、
長い演劇人生を一気に回顧したような気持ちになった。
マチソワ、二通りの色。
上口耕平+AKANE LIV、彼らの今の最高の、二色。
ソワレに、日本初演立ち上げの大切なもう一組。
鈴木勝吾とはねゆりが来てくれて、説明できない、喜び。
出会いの芝居を作って、素晴らしい出会いを得た。
今日はNY公演の舞台監督白石良高も来てくれて、
思い出話、たくさん。
伊藤氏と正月から飲んで、新年の抱負を語り合って、
「NYでオリジナルミュージカルを作りたい!どうせやるなら、それで賞とか取りたい!
わたしがググってMidtown International Theatre Festivalを見つけて、3週間後に参加団体審査募集締切がある!と見つけた日か
長い長い時間が流れた。
「Color of Life」はこれからどこに行くのだろう?
今日の客席にも、大切な知人がたくさん。
マチネ公演後駆けつけてくれた瞳子さん。
27年前に一緒にスペイン公演に行った川嶋。それも家族四人で。
NYで「Fantastics」を買った時以来の感動、と言ってくれた、
最高に敬愛するプロデューサー、中根さん。
この一日の喜びを、明日の糧に。
耕平君とAKANEさんが、よき休息をとっていますようにと祈りつつ、明日のために、
演出家は言葉で仕事をする者なので、
時折、自分の饒舌に厭気がさす。
でも、そこから美しいものが生まれるのなら、
言葉を尽くそう、と思う。
「Color of Life」を観劇してくださった仏文学の先生が、
ジャック・プレヴェールの詩「永遠の一瞬」を思いだしたと連絡をくださった。
そんな感想を得ただけでも、この饒舌で滑稽な人生も、無駄ではないと思える。
「Color of Life」初日。
何もないところに、ひとつの作品を生み出すことの喜びが、一気に押し寄せる。
観客に愛されること、それがすべて。
そして、心と体丸ごとで作品を体現してくれる、
上口耕平&AKANE LIV、この二人が賛辞を受けるのが、
わたしは本当にうれしい。
最高の誠意と集中力で稽古を重ねてくれた二人が、
なんとも、なんとも、美しい。
そう。この舞台。
人間の出会いが美しいと言われます。
真っ白なキャンバスに生まれていく色が美しいと、言われます。
劇場に流れる、変幻自在の「時」を是非体験してほしい。
この「出会い」と「時間」の芝居のために力を結集してくれたスタッフに感謝。ぎりぎり
緊張の開演でしたが、終演後には皆笑顔でした。
大ベテランから、働き盛りから、新人まで、総力でここまで来ました。
明日から3日間、5公演という、あっという間の夢。
初日の観客席には、この先の舞台でご一緒する方もたくさん。
新しい友達も、長い長い友達もいて……。
胸がいっぱい。
開幕の緊張に続き、作品が愛されたことに、興奮しすぎて、
アフタートークで知性の欠片もない、情けない演出家。
反省して明日はしゃんとしよう。
「Color of Life」舞台稽古。
もうとても再演とは呼べない細かい調整がぎりぎりまで。
内々の通しだったが、初演も観てくださった信頼する大好きな人が、
「初演の300倍いい!」と言ってくださった。
勇気1000倍。
今日の通しを経て、明日も初日開演まで、
たくさんの調整、
ひとつの大きな新しい試みを抱えているけれど、
きっとすべてうまくいく。
この作品は、後退しない。いつも前進。
今、この時出会っている人たち、環境と、
すべてに率直に真っ直ぐ、演出する。
今、この時の選択・本能の決断が、とっても大事な作品。
明日初日。
演出家が、毎日のように「観てください!」って書くのは格好悪いと思われる向きもある
わたしは全くそう思わない。
この作品をNYで産んだ時も、どうやってNYで集客するんだ!?って、毎日考えて、知
そこから始まってる。
ひとつひとつが手作りで、
ひとつひとつが「今、この時」の精一杯だった。
その先にある、今。
あの時は想像しなかった、今。
明日(もう今日だ!)、初日。
博品館劇場にて、19時開演。
当日券をご用意して、お待ちしております。