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2017年3月18日 (土)

▶劇場で神様に出会う

"Natasha, Pierre and the Great Comet of 1812" は、
二階席の後ろから二列目という深い席で観た。
Imperial Theatreという大きな箱全体を、
大きなキャバレー大きなサロンに見立てる演出は気配りが細部にまでわたっていて、後部

席上部席でも前のめりに楽しめた。

劇場の天井全体にトラスが仮設してあって、
手作り風のシャンデリアが幾つも吊ってある。
シャンデリアと同じ色味の電球も無数に。
二階席の後ろにまで。
そして、客席の中にはサイドテーブルが幾つもしつらえてあって、
可愛いスタンドが置いてある。
このすべてのシャンデリアと電球が昇降するし、
スタンド含めすべて繊細に、あるいはリズミカルに調光される。

わたしがこの公演を心に留めた理由はもうひとつ。
わたしの前の10席くらいが空いていて、
その真ん中に、杖をついてやってきた黒人のお婆さんが座った。
上演中たびたび電球やスタンドが客電としてつくので、
近くにいるお客さんと芝居を共有している感覚が生まれる。

Great Cometにはノリのいい曲がたくさん用意されているのだが、
前のお婆さんは横のお客さんがいないことをいいことに、
上半身をリズムに乗せ、膝に横に載せた杖を小粋に揺らして踊り続けていた。姿は踊っているという行為にまでいかなくても、
心の中で伸び伸びと踊っていることは後ろ姿だけでわかる。
最高のお客さまとともに、わたしは芝居を楽しんだ。

サリンジャーの「フラニーとゾーイ」のラストシーンで、妹フラニーに兄ゾーイが、Entertainmentに従事する理由として、「足の悪いお婆さん」の話をする。
自分たちが仕事をするのは、その向こうにいつも楽しみに見てくれている足の悪いお婆さんがいるからであり、それは、実は、「神」なんだ、とゾーイーは言うのだ。

わたしの目の前で、足の悪いお婆さんが、
最高にショーを楽しんでいた。
そんな観劇。

わたしがいつも「演劇の神様」と呼んでいる存在は、
こうして劇場のあちらこちらに点在している。

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