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2017年6月

2017年6月19日 (月)

▶父と娘と「ボクハレ」と

「父の日に電話できなくてごめんね」と父に今日電話をして、
ふと母の思い出を話したら、
「ママの話はやめて、またつらなるから。」と、父が言う。
複雑な出生と成長期を過ごした父には、
母は生涯をともにするたった一人の人だった。

わたしが今、台本を書き、演出をしている「ボクが死んだ日はハレ」にも、
同じような境遇の登場人物が出てくる。
どうしても父に見てほしくって何度も「東京まで出てこない?」と誘っているが、まだ、そこまでの元気は出ないらしい。
五ヶ月という時間は、
娘に台本を書かせ、作品に昇華させる力を与えてくれたが、
父は、喪ったままだ。

趣味を見つけてほしくって贈ったパソコンは気にいってくれていて、
パソコン教室に通いはじめたものの。
高齢者対象ののんびりしたクラスみたいで、
「この間アンケートを書け言われたから『じいさんばあさんの寄り合いみたいや』て書いといた」とか。
さすが、わたしの父。
でも、USBがないと保存できないからと購入したり、
ネット契約勧誘の電話がガンガンかかってくるとか、
なんだか怪しいので、
わたしが出動する必要を感じている。

本番まで稽古休みはたぶん二日。
とは言え、稽古休みは、いつも、より仕事に追われるわたし。
でも、新幹線で仕事すればなんとかなる!
うーん、わたし自身にも休みは必要か?
とか、娘は、あれこれ、あれこれ。

「ボクが死んだ日はハレ」は、心の話。
「生」きることと、生まれたからには必ずついてくる「死」の話。
これに、今、すべてをかけている。
素晴らしい音楽が生まれ、
何の法則にもとらわれない、
世界にたったひとつのミュージカルが生まれつつある。
ともに創るキャストスタッフが、この作品を最高に愛してくれていて、
わたしは幸せ。

国が揺れていることにいつも心とらわれつつ、
それでも演劇だけ創り続けることに、
今は疑問を持っていない。
「心」を描くこと。
わたしが出来ることを。

▶STONE CIRCLE TICKET CLUBへのお誘い。

石丸さち子の手がける作品(演出、脚本、翻訳等)の公演をいち早くご案内し、
チケットの先行予約をご案内するクラブができました。

名づけて「STONE CIRCLE TICKET CLUB」。

2017年に入ってから、
1月「Angel」(作・演出)
2月「旅猫リポート」(演出)
3月「Color of Life」(作・演出)
を上演し、これから、
7月「ボクが死んだ日はハレ」(企画・作・演出)
9月「サンタ・エビータ」(作・演出)
11月「スカーレット・ピンパーネル」(演出)
と、上演作品が予定されています。

石丸作品に興味をお持ちくださった皆様に、
是非、これからの作品を優先的にご案内させて頂きたいと願っています。
いろんな場所で、いろんな形で、作品を創っていますが、
わたしの作品はすべて繋がっています。
是非、続けて、感じて頂きたいのです。

どうぞどうぞご参加ください。


STONE CIRCLE TICKET CLUB
【入会金】 2000円
【年会費】 なし
【活動】  石丸さち子の演出、脚本、翻訳作品などのチケット先行予約
【入会申込方法】  入会ご希望の方は、メールに必要事項ご記入の上、
ishimaru@voiceofjapan.co.jp
までお申し込みください。
※印は入力必須項目です。
1、名前 
2、フリガナ 
3、郵便番号 
4、住所 
5、電話番号 
6、FAX番号 
7、メールアドレス 
8、メールアドレス(再入力) 
9、生年月日 
10、性別

折り返し、仮登録完了メールをお送り致します。

●登録手続きに時間がかかる場合がございます。ご了承ください。
●ご登録の情報は、Stonecircleからの連絡のために利用いたします。
●個人情報を当該業務の委託に必要な範囲で委託先に提供する場合や、
関係法令により認められる場合等を除き、
お客様の事前の承諾なく第三者に提供することはありません。

2017年6月 9日 (金)

▶チケットの転売に直面して

誤解を招く表現を削除しました。
21:21

======

新作「ボクが死んだ日はハレ」の稽古は、歌稽古を終え、
明日から本稽古に入ります。その準備に余念がありませんが、
その前にどうしても書いておかねば進めないことがあります。

この公演のチケット転売についてです。 
晴れ晴れとした気持ちで迎える稽古ですが、
この問題だけは、心に重くのしかかっています。 

音楽業界でも演劇業界でも、
この問題は根深く、なかなか取り締まり切れないこと、
その現状について、今まで以上に考えることになりました。
わたしたちの公演が、それに対処できない形で券売をしたのは、
大きな反省です。

先日、チケットの転売ではじめて詐欺容疑で立件されたニュースを見つけました。
http://www.sankei.com/west/news/170607/wst1706070047-n1.html
音楽業界でも、この問題に立ち向かう動きがあるようです。
https://www.tenbai-no.jp/

わたしたちの公演は、90席余が9公演の、
非常に小規模なものです。 
その中から、かなりの割合のチケットが、高額転売されています。
そして、それでも観たいと購入されるお客さまがたくさんいることも見てきました。
その流れを、今回、わたしたちは止めることができませんでした。
「買わないでください」と、すぐに断固として宣言することができませんでした。

高額すぎるチケットは、きっと売れ残ることもあるでしょう。
本来、売れ残るべきなのです。この流れを止めるためには。
わたしたちが心を込めて創る作品が幕を開けて、
空いた席を見るのはとても辛いことですが……。
また、高価なチケットをご入手いただいた方には、
申し訳ない気持ちとともに、全力でその「観たい」に応えたいと思います。
この二律背反な気持ちは、言葉では説明のつかないものです。 

演劇は、長い時間をかけて、たくさんの専門家が協力しあって、創り上げる、とても人間的な芸術です。舞台には、俳優やスタッフの人生(経験値)や愛情が、綾織りのように織り込まれているのです。
その作品を、人生の中のたった2時間ほどの体験を、お客さまに、チケット代として、等価交換で買っていただくのです。

わたしは、長年この仕事を心から愛してきましたから、
その流れを心ない人たちに崩されるのが、悔しくてなりません。
しかしながら、金銭を得るためにはどんな手段をも選ばない人々が生まれるのは、
物心全般、貨幣が取り持つ世の中では、止めることができないことです。
そういう「世界」に面と向かって、
わたしは、わたしたちの見たい「世界」を描くしかありません。
チケットを手にいれ、足を運んでくださったお客さまに、
その「世界」を届けるよりほかありません。

日頃、自分は演劇者なので、言いたいことはすべて作品の中でと思っています。
問題提議したり警鐘を鳴らす形でも、
世の憂さを劇場にいる間すっきり忘れるエンタテイメントを提供する形でも。

でも、この転売問題に関しては、作品だけでは伝わらないと感じ、
ブログに思いをまとめて、作品の創作に進みます。


今回の公演だけでは、お答えできることとできないことがありますが、
千穐楽を迎えるまで、万全の体制を、スタッフと相談してまいります。
そして、まずは愛される作品を創り、再演など、次の道を考えます。

後日、正式に公演HPで発表いたしますが、
当日券はお出しする方向で進んでおります。
小劇場ゆえ、受付スペースも広くはありません。
近隣に迷惑の出ない形で、体制を整えますので、
今しばらくお待ちください。

公演HP
https://polypho.wixsite.com/harebare 

 

あらゆる形で、この作品を楽しみにしてくださっている方々に感謝し、
わたしたちは、質の高い、人の心に残る作品を創ることに、
邁進いたします。 

 

演出家 劇作家
Theatre Polyphonic主宰
石丸さち子 

※転載はお断りいたします。
※言葉では伝わらないことをあえて言葉にしております。
一部分の抜粋もされないよう、お願いいたします。 

 

==========追記==========

先ほど、稽古開始に向けてあえて言葉にした、
チケットの転売について、
Twitterで、先ほどのポストを読み悲しまれる方の声が届きました。
わたし自身、胸が痛くなりました。
誤解を生む表現があったようなので、 
追記します。

===

転売を専門にする方たちがチケットを購入されたと認識しています。

出演者の責任では全くありませんし、
責められる理由など微塵もありません。
ボクハレチームは、出会ったばかりですが、
きっとこれから絶大なる信頼と友情で結ばれていくことでしょう。

責任は、主宰のわたしにあります。
それは、先ほどのポストで記した通りです。 

 

問題は、誰かが誰かを愛する気持ち、大切に思う気持ちに、
つけこむ人たちがいることです。

明日から、まさに、
「誰かが誰かを愛する気持ち、大切に思う気持ち」
についての作品を創っていきます。 


言葉は、あるときは届き、
あるときは人を傷つける可能性のあるものだと自覚して、
明日からの稽古に向かいます。

 

石丸さち子

 

 

 


 

 

 

2017年6月 3日 (土)

▶五月の風と、優しい牛丼。

記憶に残る食事は?
という質問。
何度か訊かれたことがあったから、いつでも答えられる。
母の作ってくれた家族の食事をいれると大変なことになるから、別枠として……
1位はスペインにて旅公演中。
2位は東京湾近辺にてデート中。
3位は、築地本願寺にて。

1986年、わたしが俳優としてNINAGAWA STUDIOに入った年。
平さんのオイディプス王、野外公演。
築地本願寺の本堂と階段、境内を縦横無尽に駆け抜けてテーバイの市民として平さんに向かい続けるのは、
最高に幸せだった。
でも、みんなへとへとで。
ゴールデンウィーク前の野外の夜稽古はまだまだ寒くって、
烈しく動いた後に、どんどん汗が冷えて凍えそうだった。
そして、歌いまくり動きまくりで、おなかぺこぺこで。

稽古終わりに、100人近くいたスタッフキャストに、
Y屋の牛丼が届いた。
蜷川さんからの差し入れ。
稽古着浴衣のまま、本願寺の境内で、みんなと食べた。
あんなに美味しい夕飯、あんなに楽しい夕飯、なかった。

蜷川さんの演助を始めてからは、
よく帰り道、車に乗っけてもらってお肉を食べに連れていってもらったけれど、
あの俳優時代の牛丼の味は、
蜷川さんのもとで商業演劇に出始めた頃の未来への期待や、
平さんとご一緒できる興奮や、
演じる心と体の熱さの余韻とともに、
きっと一生忘れない。
きっと最期まで思い出す。

だから、時々、すごく牛丼が食べたくなる。

今日も、五月の心地よい外に背を向け、
ひたすら仕事に埋没する自分が、少し寂しくなった。

散歩に出て、DVDを借り、スタバでコーヒーを買い、
ワンピースの裾が五月の風と遊ぶのを楽しみながら、
牛丼を買って帰った。

牛丼を食べたら、ちょっと泣いてしまったので、
こうして書いている。

今踏み出す一歩を、支えてくれるのは、
過去、現在、未来のすべて。
でも、いちばん優しいのは、過去、かもしれない。
向き合って闘う必要がない。
過去は、振り向けば、閑かにそこにある。

牛丼メランコリーが終わったら、
ブエノスアイレスの過去に戻るよ。
「ボクが死んだ日はハレ」本稽古が始まるまで、
「サンタ・エビータ」のリライトに全力。

 
 
 

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